中性脂肪がなかなか下がらない、HDLコレステロールが低い場合に処方されるのがフィブラート系の薬剤です。
フィブラート製剤について、
「作用機序」
「代表的な薬剤の比較」
「スタチン併用時の注意点」
について薬局での業務に必要な情報に絞ってまとめました。
日々の薬剤師業務のお役に立てると幸いです。
日本で上市されているフィブラート系の薬剤は下記の4成分となります。
クリノフィブラートはほとんど見る機会はありませんよね。
ベザフィブラートとフェノフィブラートの処方頻度が高いかと思います。
また2019年6月に長期投与が解禁されたパルモディア錠(ペマフィブラート)は選択的PPARαモジュレーターに位置付けられ既存薬で中性脂肪が下がらない場合に切り替わるケースが増えてくるかもしれません。
一般名 | 商品名 | 規格 |
---|---|---|
クリノフィブラート | リポクリン錠 | 200mg |
ベザフィブラート | ベザトールSR錠 ベザリップ錠 |
100mg 200mg |
フェノフィブラート | トライコア錠 リピディル錠 |
53.3mg 80mg |
ペマフィブラート | パルモディア錠 |
0.1mg |
フィブラート製剤は肝臓のペルオキシゾーム増殖剤活性化受容体α(PPARα:読み方ピーパーアルファ)を活性化させることで下記の2つの作用があります。
PPARはαだけでなく、β/δ、γの3つのサブタイプがありますが、フィブラート系薬剤の中でもペマフィブラートが「α」に対する選択性が高いのが特徴です。(選択的PPARαモジュレーター)
それぞれの作用機序について説明していきます。
フィブラート製剤は中性脂肪の分解の促進と、中性脂肪の合成を抑えることで血中の中性脂肪を低下させます。
PPARαが活性化されると、リポタンパクリパーゼ(LPL)も活性化します。
LPLには中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセリンに分解する作用があります。
遊離脂肪酸は脂肪細胞などの組織に取り込まれエネルギー源として再利用されます。
また中性脂肪は肝臓でアセチルCoAから合成されます。
フィブラート製剤は、アセチルCoAからTGを合成するために必要なアセチル CoA カルボキシラーゼを抑制することで肝臓での中性脂肪の合成も抑える働きがあります。
PPARαが活性化されるとHDLコレステロールの構成成分であるApoA-1、ApoA-2というタンパク質を増加させ、HDLコレステロールが増加します。
インタビューフォームをもとにそれぞれの臨床効果を比較しました。
ベザフィブラート | フェノフィブラート | |
---|---|---|
TG低下 | 30〜57% | 40〜48% |
HDL上昇 | 32〜48% | 35〜36% |
LDL低下 | 12〜21% | 18〜25% |
TC低下 | 11〜19% | 12〜17% |
薬剤 | 用法 |
---|---|
ベザフィブラート | 1日400mg 朝夕食後 腎機能障害・高齢者には適宜減量 |
フェノフィブラート | 1日1回106.6mg~160mg を食後 MAX160mg |
透析患者にはベザフィブラートが禁忌となっています。
薬品名 | 粉砕の可否 |
---|---|
ベザトールSR錠 | × 徐放剤のため |
リピディル錠 トライコア錠 |
◯ 遮光する |
ベザトールSR錠は徐放剤のため、粉砕や半錠の調整はできません。
リピディルの販売元のあすか製薬によると
「粉砕後、25度、75%の湿度で1ヶ月安定」
とのデータがあります。
光に不安定のため必ず粉砕後は遮光をしなければいけません。
フェノフィブラートには尿酸を下げる作用が報告されています。
高尿酸血症を伴う高脂血症患者に対し、フェノフィブラート錠剤159.9mg~160mgに相当する用量を1日1回8週間投与した試験において、血清脂質全般改善度「中等度改善」以上の改善率は78.3%(54/69 例)であった。また、投与前に約8mg/dLであった血清尿酸値は投与8週後には約6mg/dL以下まで低下しており、尿酸値の低下率が15%以上である中等度改善以上の症例は23/30例(76.7%)であった。
引用元 リピディル インタビューフォーム
尿酸は通常は腎臓の糸球体でろ過をされた後、近位尿細管にある尿酸トランスポーター(URAT1)によって90%近くが身体の中に再吸収されます。
フェノフィブラートは尿酸トランスポーター(URAT1)を阻害する作用があるため、尿酸値を低下させます。
スタチン系薬剤を服用していて、中性脂肪が下がらない場合やHDLコレステロールが低い場合にフィブラート系の薬剤が併用されることがあります。
スタチン系薬剤とフィブラート系薬剤を併用の際、腎機能に異常がある場合は「原則禁忌」となっています。
急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症があらわれやすいため、
腎機能に関する臨床検査値に異常が認められる患者では原則として併用しないこととするが,治療上やむを得ないと判断される場合にのみ慎重に併用すること。
となっています。
国内外のガイドラインではスタチン系とフィブラート系の併用禁忌の記載がないことからも、2018年10月16日に添付文書の改訂があり、「原則禁忌」の表記が削除されました。
腎機能低下時にやむを得ず併用する場合は、定期的に腎機能検査等を実施し、自覚症状(筋肉痛、脱力感)の発現、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇、血清クレアチニン上昇等の腎機能の悪化を認めた場合は直ちに投与中止することと「重要な基本的注意」に追記されています。
(2018年10月16日 追記)
薬局でも「スタチン製剤とフィブラート製剤の併用」は時々遭遇するのではないでしょうか。
疑義照会のタイミングも難しいですし、患者さんにも不安は極力与えたくないですよね。
そのために定期的に「腎機能の検査値」や「CK値」を薬局でも確認するようにしましょう。
腎機能の低下が疑われる場合は、念のため疑義照会をし、薬歴とレセ摘コメントへ「併用確認済み」のコメントを入れておくようにしましょう。
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。
お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。
コメント欄ご利用についてのお願い
※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます