スタチン系薬剤一覧・作用機序・比較・服薬指導のポイント

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

HMG-CoA還元酵素阻害薬であるスタチン系薬剤は6成分が上市されています。

LDLコレステロールが高い場合、スタチン製剤が第一選択薬となるため、薬局でも取り扱う機会が多いのではないでしょうか。

スタチン製剤が処方される患者さんへの服薬指導に役立てるために、

「強さの違い」
「作用機序」
「スタチンと併用に注意するもの」
「服薬指導・薬歴記載の要点」

についてまとめてみました。

スタチン製剤の記事はインターネット上に多くありますが、薬局の現場で役立つ情報に絞ってまとめてみました。

スタンダードスタチン・ストロングスタチン一覧

発売の時期が古い順に上から並べています。

LDLコレステロールを下げる「強さ」によって、
スタンダードスタチン」と「ストロングスタチン」に分類されます。

スタンダードスタチン間、ストロングスタチン間のLDLコレステロールを下げる「強さ」に大差はないとされています。

 強さ 一般名 先発品名
スタンダード    プラバスタチン
ナトリウム
メバロチン
5mg
10mg
シンバスタチン リポバス
5mg
10mg
20mg
フルバスタチン
ナトリウム
ローコール
10mg
20mg
30mg
ストロング    アトルバスタチン
カルシウム
リピトール
5mg
10mg
ピタバスタチン
カルシウム
リバロ
1mg
2mg
4mg
ロスバスタチン
カルシウム
クレストール
2.5mg
5mg

 

作用機序(HMG-CoA還元酵素阻害)

スタチンの作用機序はコレステロールの合成経路に関わる「HMG-CoA還元酵素」を阻害することで肝臓でのコレステロールの合成を抑えます。

スタチン=「肝臓でのコレステロールの合成阻害

と思われがちですが、実際の作用機序は

血中から肝臓へのLDLコレステロール取り込み促進により血中LDLコレステロールを低下させる

です。

流れを簡単に説明します。

肝細胞内でのLDLコレステロール減少

肝臓の細胞表面でLDL受容体の増加

血液中から肝臓へLDLコレステロールの取り込みが促進される

血中のLDLコレステロールが低下する

また肝臓でのコレステロールの合成が抑えられることで、VLDL(超低密度リポタンパク質)の合成が低下します。

VLDLは末梢組織にTG(中性脂肪)を運ぶ働きがありますので、VLDLが低下することで結果的にTGも低下します。

スタチン製剤には下記のような作用があるとされています。

  • 総コレステロールの低下作用
  • LDLコレステロールの低下作用
  • HDLコレステロールの上昇作用
  • 中性脂肪(TG)の低下作用

 

スタチンとグレープフルーツとの飲み合わせ

「コレステロールの薬を服用中はグレープフルーツジュースを飲んだらダメなんでしょ?」

薬局で患者さんに聞かれることがありますが、スタチン製剤の中でグレープフルーツと影響がでるのが、リピトール(一般名:アトルバスタチン)、リポバス(一般名:シンバスタチン)です。

グレープフルーツに含まれるフラノクマリンが小腸のCYP3A4を阻害するため、アトルバスタチンやシンバスタチンの代謝を阻害し、AUCやCmaxが上昇してしまいます。

なお、グレープフルーツの小腸でのCYP3A4阻害は不可逆的で、回復までに数日かかることから、間隔をあけたとしても影響がでてしまいます。

そのためグレープフルーツと併用注意の薬剤では、たとえ間隔をあけたとしてもグレープフルーツを避けるように指導しなければいけません。

大日本住友製薬の「カルグレ」によると、AUCとCmaxへの影響は下記のとおりです。

アトルバスタチンでAUCが+146%上昇、Cmaxが+6%上昇
(GFJ400mlを服用前後に計15回摂取した場合)

シンバスタチンでAUCが+1514%上昇、Cmaxが+842%上昇
(GFJ400mlを服用前後に計9回摂取した場合)

  • メバロチン(プラバスタチン)
  • ローコール(フルバスタチン)
  • リバロ(ピタバスタチン)
  • クレストール(ロスバスタチン)

についてはグレープフルーツの影響はないとされています。

フィブラート(トライコア・リピディル・ベザトール)との併用

TG(中性脂肪)が下がらない場合に、フィブラート系のベザトールSR(一般名:ベザフィブラート)やリピディルトライコア(一般名:フェノフィブラート)が併用されるケースがあります。

しかし腎機能の臨床検査値に異常がある場合は「原則併用禁忌」となっています。

「原則併用禁忌」の理由ですが、横紋筋融解症の発現率が上昇するため「治療上やむを得ないと判断される場合にのみ併用すること」となっています。

国内外のガイドラインではスタチン系とフィブラート系の併用禁忌の記載がないことからも、2018年10月16日に添付文書の改訂があり、「原則禁忌」の表記が削除されました。

腎機能低下時にやむを得ず併用する場合は、定期的に腎機能検査等を実施し、自覚症状(筋肉痛、脱力感)の発現、CK(CPK)上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇、血清クレアチニン上昇等の腎機能の悪化を認めた場合は直ちに投与中止することと「重要な基本的注意」に追記されています。
(2018年10月16日 追記)

また腎機能が正常な場合でも急激な腎機能悪化を伴う横紋筋融解症が現れやすくなるため「併用注意」となっています。

リポバス(一般名:シンバスタチン)のみフィブラート併用時の1日上限が10mgに設定されています。

スタチン製剤とフィブラート系製剤が併用されている場合は、薬局でも注意して観察する必要があります。

薬局での注意点・服薬指導のポイント

  • 腎機能の臨床検査値を定期的に確認する
  • 腎機能低下時は原則禁忌のため「併用確認」の疑義照会が必要
  • 筋肉の痛み・脱力感・赤褐色尿の有無など横紋筋融解症の症状をお伝え
  • 定期的に血液検査を実施(CKに問題ないか確認 基準値の5〜10倍が横紋筋融解症の目安 )

 

脂溶性・水溶性・代謝排泄の違い

一般名
(薬品名)
脂溶性・水溶性 代謝排泄
プラバスタチン
(メバロチン)
水溶性 CYP代謝なし
胆汁+腎排泄
シンバスタチン
(リポバス)
脂溶性  CYP3A4
肝代謝
フルバスタチン
(ローコール)
脂溶性 CYP2C9
肝代謝
アトルバスタチン
(リピトール)
脂溶性  CYP3A4
肝代謝
ピタバスタチン
(リバロ)
脂溶性  CYP2C9(わずか)
胆汁排泄
ロスバスタチン
(クレストール)
水溶性 CYP2C9(わずか)
CYP2C19(わずか)
胆汁排泄

プラバスタチンは水溶性でCYPの代謝を受けません。

スタチン製剤は「重篤な肝障害のある患者」には禁忌になっていますが、プラバスタチンのみ対象外となっています。

薬歴記載・服薬指導の要点・まとめ

スタチン製剤について、服薬指導や薬歴記載の要点をピックアップします。

  • LDLコレステロールを下げる強さは「スタンダード間」「ストロング間」で大差なし
  • 腎機能・CKの臨床検査値を定期的にチェック
  • フィブラート併用時、腎機能低下時は横紋筋融解症のリスクに注意喚起
  • シンバスタチン・アトルバスタチンはグレープフルーツジュースによる影響あり
  • 通常は飲み忘れ時は通常は気付いた時に服用(次回服用分と近い時はとばす)
  • 承認外の用法は疑義照会とレセ摘コメントが必要(個別指導・返戻対策)
    プラバスタチン以外の分2処方
    フルバスタチンの夕食後以外
  • 妊娠希望の女性には注意(妊婦には禁忌
  • LDL/HDLの比率は1.5以下が理想 
    LDLやHDLが基準値内に入っていても比率もチェックする
  • 薬物療法だけでなく食事療法、ウォーキングなど有酸素運動を取り入れるよう指導

以上、スタチン製剤についてまとめました。

日々の薬局業務に少しでもお役に立てると幸いです。

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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