利尿薬一覧・作用機序(サイアザイド・ループ・カリウム保持・バソプレシン拮抗)

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

利尿薬は下記のように分類されます。

  • サイアザイド利尿薬
  • サイアザイド類似利尿薬
  • ループ利尿薬
  • カリウム保持性利尿薬
  • バソプレシン拮抗薬
  • 炭酸脱水酵素阻害薬

薬局で主に扱う利尿剤について作用機序や特徴についてまとめました。

利尿剤一覧(サイアザイド・ループ・カリウム保持性・バソプレシン拮抗)

利尿薬の作用機序はざっくりいえば全て同じで、腎臓の尿細管でNaや水分の再吸収を抑制することで、尿中から余分な水分を排泄させます。

利尿薬の分類によって、尿細管で作用する部位など細かい点に違いがあります。

尿細管は、

  • 近位尿細管
  • ヘンレループ
  • 遠位尿細管
  • 集合管

に分類されます。

主な利尿薬の一覧と、尿細管のどこに作用するのか下記にまとめています。

分類 商品名
一般名
作用部位 効果持続
時間
サイアザイド  ヒドロクロロチアジド「トーワ」
ヒドロクロロチアジド
遠位尿細管   12 
フルイトラン
トリクロルメチアジド
24 
サイアザイド類似 ナトリックス
インダパミド 
24 
ループ ラシックス
フロセミド
ヘンレループ
ヘンレ係蹄の上行脚 
6
ダイアート
アゾセミド
12
ルプラック
トラセミド 
6〜8 
K保持性 

アルダクトン
スプロノラクトン
遠位尿細管 
 
48〜72
セララ
エプレレノン
 
ミネブロ
エサキセレノン
 
バソプレシン拮抗 サムスカ
トルバプタン
集合管 12〜24

時間(単位:hr)

利尿薬と血中Na・K・Ca・糖・尿酸・コレステロールの影響

検査項目 サイアザイド ループ K保持
Na 低下 低下 低下
K 低下 低下  上昇 
Ca 上昇 低下 低下
上昇 上昇  変化なし 
尿酸 上昇  上昇  変化なし 
LDL 上昇  上昇  変化なし 

 

サイアザイド利尿薬特徴・作用機序

サイアザイド利尿薬・類似薬の作用機序(トリクロルメチアジド・ヒドロクロロチアジド・インダパミド)

サイアザイド利尿薬、非サイアザイド利尿薬は遠位尿細管Na-Cl共輸送体を阻害し、Naの再吸収を抑制します。

Naは水分と一緒に移行するため、水分の再吸収を抑制し、水分を尿から排泄させます。

降圧作用については、循環血液量の減少と、交感神経刺激に対する末梢血管の感受性が低下するためと考えられています。

サイアザイド系利尿薬は起立性低血圧が増強するためアルコールと併用注意となっています。

サイアザイド利尿薬で低カリウム血症が起こるメカニズム

サイアザイド利尿薬では低カリウム血症が問題になることがあります。

遠位尿細管でNaの再吸収を阻害するため、Naが高濃度で尿細管を流れていきます。

Naが高濃度で集合管にたどりつくと、集合管でのNa+-K+交換系が働き、Kの排泄が促進し、血中のKが低下するのです。

ループ利尿薬特徴・作用機序

ループ利尿剤作用機序(フロセミド・アゾセミド・トラセミド)

ループ利尿薬はヘンレループ(ヘンレ係蹄の上行脚)のNa+-K+-2Cl共輸送体を阻害し、Na(ナトリウム)やCl(クロール)の再吸収を阻害します。

Naは水と一緒に移動することから、Naの再吸収を阻害することで、水分の再吸収を抑え、尿中から水分を排泄します。

ループ利尿剤で低カリウム血症が起こる理由・メカニズム

ループ利尿薬はヘンレループのNa+-K+-2Cl共輸送体を阻害し、NaやClの再吸収を阻害します。

Naが高濃度で遠位尿細管や集合管にたどりつくと、Na+-K+交換系が働き、Kの排泄が促進し、血中のKが低下するのです。

ループ利尿薬の中でもトラセミド(商品名:ルプラック)は抗アルドステロン作用があるため低カリウム血症がおこりにくい特徴があります。

カリウム保持性利尿薬作用機序・特徴

カリウム保持性利尿薬作用機序(スピロノラクトン・エプレレノン・エサキセレノン)

カリウム保持性利尿薬は遠位尿細管で水分の再吸収を抑え、余分な水分を尿から排泄します。

アルドステロンが遠位尿細管にあるアルドステロン受容体(鉱質コルチコイド受容体)に結合すると、Na-K交換部位にてNaの再吸収が促進され、代わりにKが排泄されます。

カリウム保持性利尿薬はアルドステロン受容体に結合することで、アルドステロンの結合を阻害しNaの血液中への再吸収とKの排泄を抑えます。

Naは水分と共に移動するため水分の再吸収を抑制し、尿中から水分を排泄します。

カリウムの排泄が抑制されることから血中カリウムは上昇します。

スピロノラクトン(アルダクトン)とエプレレノン(セララ)の違い

スピロノラクトン(アルダクトン)はアルドステロン受容体だけでなく、性ホルモンの受容体(アンドロゲンプロゲステロン)にも結合してしまいます。

男性の場合は女性化乳房、女性の場合は生理不順などの副作用が現れることがあります。

一方、エプレレノン(セララ)は選択的アルドステロンブロッカー(SAB:Selective Aldosterone Blocker)で、アルドステロン受容体に選択的に結合しアルドステロンと拮抗します。

そのためエプレレノン(セララ)はスピロノラクトン(アルダクトン)で見られるような性ホルモン関連の副作用が少ないのが特徴です。

エプレレノン(セララ)はCYP3A4阻害薬併用時は1日最大25mgまで

エプレレノン(セララ)はCYP3A4で代謝されるため、CYP3A4を阻害する薬剤と併用する場合は1日MAX25mgまでとの注意書きがあります。

エプレレノン(セララ)がMAX25mgとなる併用薬

  • クラリスロマイシン(商品名:クラリス)
  • エリスロマイシン(商品名:エリスロシン)
  • フルコナゾール(商品名:ジフルカン)
  • サキナビル(商品名:インビラーゼ)
  • ベラパミル塩酸塩(商品名:ワソラン)

なお、下記のようにCYP3A4を強く阻害する薬剤とは併用禁忌となっています。

  • イトラコナゾール(商品名:イトリゾール)
  • リトナビル(商品名:ノービア)
  • ネルフィナビル(商品名:ビラセプト)

バソプレシン拮抗薬作用機序

バソプレシン拮抗薬作用機序(トルバプタン)

バソプレシン拮抗薬であるトルバプタン(商品名:サムスカ)は集合管で水の再吸収を阻害します。

バソプレシン-V2受容体にバソプレシンが結合すると水チャネルであるアクアポリン-2(AQP2)が発現亢進し、管腔側に移動することで水の透過性が亢進され、水の再吸収が促進します。

バソプレシンは「水の再吸収を促進=尿量を低下」させることから抗利尿ホルモンといわれます。

トルバプタン(商品名:サムスカ)は抗利尿ホルモンであるバソプレシンがバソプレシン-V2受容体(集合管に存在)に結合するのを阻害し水の再吸収を抑制します。

NaやKなどの電解質の排泄は増加させず、水分のみを排泄させるのが特徴です。

トルバプタンはCYP3A4阻害薬と併用時は減量を

トルバプタン(商品名:サムスカ)はCYP3A4で代謝されるため、CYP3A4を阻害する薬剤と併用する場合はサムスカを減量することとなっています。

弱い・中等度のCYP3A4阻害薬と併用時・・・1/2に減量
強力なCYP3A4阻害薬と併用時・・・1/4に減量

CYP3A4を阻害するグレープフルーツ、CYP3A4を誘導するセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)も併用注意となっています。

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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