利尿薬は下記のように分類されます。
薬局で主に扱う利尿剤について作用機序や特徴についてまとめました。
利尿薬の作用機序はざっくりいえば全て同じで、腎臓の尿細管でNaや水分の再吸収を抑制することで、尿中から余分な水分を排泄させます。
利尿薬の分類によって、尿細管で作用する部位など細かい点に違いがあります。
尿細管は、
に分類されます。
主な利尿薬の一覧と、尿細管のどこに作用するのか下記にまとめています。
分類 | 商品名 一般名 |
作用部位 | 効果持続 時間 |
---|---|---|---|
サイアザイド | ヒドロクロロチアジド「トーワ」 ヒドロクロロチアジド |
遠位尿細管 | 12 |
フルイトラン トリクロルメチアジド |
24 | ||
サイアザイド類似 | ナトリックス インダパミド |
24 | |
ループ | ラシックス フロセミド |
ヘンレループ ヘンレ係蹄の上行脚 |
6 |
ダイアート アゾセミド |
12 | ||
ルプラック トラセミド |
6〜8 | ||
K保持性 |
アルダクトン スプロノラクトン |
遠位尿細管 |
48〜72 |
セララ エプレレノン |
|||
ミネブロ エサキセレノン |
|||
バソプレシン拮抗 | サムスカ トルバプタン |
集合管 | 12〜24 |
時間(単位:hr)
検査項目 | サイアザイド | ループ | K保持 |
---|---|---|---|
Na | 低下 | 低下 | 低下 |
K | 低下 | 低下 | 上昇 |
Ca | 上昇 | 低下 | 低下 |
糖 | 上昇 | 上昇 | 変化なし |
尿酸 | 上昇 | 上昇 | 変化なし |
LDL | 上昇 | 上昇 | 変化なし |
サイアザイド利尿薬、非サイアザイド利尿薬は遠位尿細管でNa+-Cl-共輸送体を阻害し、Naの再吸収を抑制します。
Naは水分と一緒に移行するため、水分の再吸収を抑制し、水分を尿から排泄させます。
降圧作用については、循環血液量の減少と、交感神経刺激に対する末梢血管の感受性が低下するためと考えられています。
サイアザイド系利尿薬は起立性低血圧が増強するためアルコールと併用注意となっています。
サイアザイド利尿薬では低カリウム血症が問題になることがあります。
遠位尿細管でNaの再吸収を阻害するため、Naが高濃度で尿細管を流れていきます。
Naが高濃度で集合管にたどりつくと、集合管でのNa+-K+交換系が働き、Kの排泄が促進し、血中のKが低下するのです。
ループ利尿薬はヘンレループ(ヘンレ係蹄の上行脚)のNa+-K+-2Cl–共輸送体を阻害し、Na(ナトリウム)やCl(クロール)の再吸収を阻害します。
Naは水と一緒に移動することから、Naの再吸収を阻害することで、水分の再吸収を抑え、尿中から水分を排泄します。
ループ利尿薬はヘンレループのNa+-K+-2Cl–共輸送体を阻害し、NaやClの再吸収を阻害します。
Naが高濃度で遠位尿細管や集合管にたどりつくと、Na+-K+交換系が働き、Kの排泄が促進し、血中のKが低下するのです。
ループ利尿薬の中でもトラセミド(商品名:ルプラック)は抗アルドステロン作用があるため低カリウム血症がおこりにくい特徴があります。
カリウム保持性利尿薬は遠位尿細管で水分の再吸収を抑え、余分な水分を尿から排泄します。
アルドステロンが遠位尿細管にあるアルドステロン受容体(鉱質コルチコイド受容体)に結合すると、Na-K交換部位にてNaの再吸収が促進され、代わりにKが排泄されます。
カリウム保持性利尿薬はアルドステロン受容体に結合することで、アルドステロンの結合を阻害しNaの血液中への再吸収とKの排泄を抑えます。
Naは水分と共に移動するため水分の再吸収を抑制し、尿中から水分を排泄します。
カリウムの排泄が抑制されることから血中カリウムは上昇します。
スピロノラクトン(アルダクトン)はアルドステロン受容体だけでなく、性ホルモンの受容体(アンドロゲン・プロゲステロン)にも結合してしまいます。
男性の場合は女性化乳房、女性の場合は生理不順などの副作用が現れることがあります。
一方、エプレレノン(セララ)は選択的アルドステロンブロッカー(SAB:Selective Aldosterone Blocker)で、アルドステロン受容体に選択的に結合しアルドステロンと拮抗します。
そのためエプレレノン(セララ)はスピロノラクトン(アルダクトン)で見られるような性ホルモン関連の副作用が少ないのが特徴です。
エプレレノン(セララ)はCYP3A4で代謝されるため、CYP3A4を阻害する薬剤と併用する場合は1日MAX25mgまでとの注意書きがあります。
エプレレノン(セララ)がMAX25mgとなる併用薬
なお、下記のようにCYP3A4を強く阻害する薬剤とは併用禁忌となっています。
バソプレシン拮抗薬であるトルバプタン(商品名:サムスカ)は集合管で水の再吸収を阻害します。
バソプレシン-V2受容体にバソプレシンが結合すると水チャネルであるアクアポリン-2(AQP2)が発現亢進し、管腔側に移動することで水の透過性が亢進され、水の再吸収が促進します。
バソプレシンは「水の再吸収を促進=尿量を低下」させることから抗利尿ホルモンといわれます。
トルバプタン(商品名:サムスカ)は抗利尿ホルモンであるバソプレシンがバソプレシン-V2受容体(集合管に存在)に結合するのを阻害し水の再吸収を抑制します。
NaやKなどの電解質の排泄は増加させず、水分のみを排泄させるのが特徴です。
トルバプタン(商品名:サムスカ)はCYP3A4で代謝されるため、CYP3A4を阻害する薬剤と併用する場合はサムスカを減量することとなっています。
弱い・中等度のCYP3A4阻害薬と併用時・・・1/2に減量
強力なCYP3A4阻害薬と併用時・・・1/4に減量
CYP3A4を阻害するグレープフルーツ、CYP3A4を誘導するセイヨウオトギリソウ(セント・ジョーンズ・ワート)も併用注意となっています。
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