薬局での認知症患者への対応

この記事を書いた人

今井雄基(いまいゆうき)

株式会社倉敷健康企画
管理薬剤師 認定実務実習指導薬剤師
岡山県出身

こんにちは、メディカルライターの今井雄基です。
軟膏の混合の処方が増えており、混合の機械が切実に欲しい今日この頃。

さて、日本の人口における高齢者の割合が増えるにつれて、認知症患者が増加の一途をたどっています。

2017年現在、400万人を超える認知症軽度認知機能障害MCI)患者がいると言われていますが、2025年には700万人を突破し、65歳以上の5人に1人が認知症になると予想されています。

厚生労働省が発表している新オレンジプランでは認知症の容態に応じた適切な医療の提供、早期発見、早期治療が必要であるとされており、薬剤師による認知症患者への対応についての知識と対応力の向上が求められています。

認知症治療薬は4種類発売されていますが、いわゆる根治薬はありません。
各製薬メーカーが現在のターゲットとは違う治療薬の開発を進めていますので、今後の新薬に期待したいものです。

認知機能障害を薬局で見分ける

さて、皆さんの薬局にも来られている認知症患者ですが、認知症と診断されたいわゆる認知症治療薬を服用している方以外の、MCIの方や診断を受けていないけれど、この方大丈夫かな?と思われる方の薬局窓口でのチェックについて話をしたいと思います。

薬局で下記のような患者さんはいらっしゃいませんか?

  • 会計の際に出すお金がお札ばかりで小銭がたくさんたまっている
    普段から患者さんに対して小銭を使ってあげるように促してあげていると財布の中をチェックしやすいです。
  • 受診間隔、曜日がバラバラで自覚がない
    日常業務の中で残薬の確認をするなどして確認ができます。
  • 処方箋の期限切れを何回も起こしている
  • 同じ商品について短期間に何回も購入する
    薬歴など記録に残しておきましょう。
  • 季節感のない服を着ている
    中等度、高度認知機能障害がある場合は衣服の着衣も難しくなります。
  • もらった薬がない、足りなくなったとたびたび連絡がある
    普段薬を置いている場所を忘れてしまったり、普段と違う場所に置いてしまったりした場合に起こります。また、飲みすぎてその自覚がない場合にも起こるため注意が必要です。

 

服薬情報提供書で医師に情報共有を

上記の状況や、患者さんと話をすることで得られる情報(話しぶり、受け答え、体臭や口臭、身なりなど)を五感で感じ取り、それによって認知機能障害が疑われ、きちんと服薬できていないと判断した場合、医師に服薬情報提供書(トレースレポート)を送り、地域包括ケアセンターや担当のケアマネージャーに連絡をしましょう。
そうすることで薬局側が知らない情報の共有もでき、その後の対応や対策を検討できます。

必要に応じて患者さんに同意を得てご自宅に伺って様子を確認してみるのも手でしょう。

患者さんが訪問を拒否することもあるため、ケアマネージャーや看護師と一緒に訪問するのも良いと思います。

ご自宅に伺うことで、さらに自宅の整理整頓が全くできておらず、家の中がごみ屋敷のようになっていたり、残薬が大量に出てきたりするケースに遭遇することもあると思います。

薬局窓口から認知症の疑いのある患者さんを見つけ、服薬の改善だけでなく患者さんの健康や生活の改善につなげていくことができれば良いですね。

この記事を書いた人

今井雄基(いまいゆうき)

株式会社倉敷健康企画
管理薬剤師 認定実務実習指導薬剤師
岡山県出身

実習先の薬局で在宅医療に興味を持ちそのまま就職、2009年より現職。
調剤、在宅医療、OTCなど地域密着薬局での経験を元に現場に役立つ情報を発信してまいります。

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