認知症治療薬はコリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬の大きく2つに分類されます。
コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬について一覧、作用機序、服薬指導のポイントをまとめました。
一般名 | 商品名 | 規格 | 作用機序 |
---|---|---|---|
ドネペジル塩酸塩 | アリセプト |
|
AChE阻害 |
ガランタミン臭化水素酸塩 | レミニール |
|
AChE阻害 APL作用 |
リバスチグミン | イクセロン リバスタッチ |
|
AChE阻害 BuChE阻害 |
メマンチン塩酸塩 | メマリー |
|
NMDA受容体拮抗 |
AChE阻害・・・アセチルコリンエステラーゼ阻害
BuChE阻害・・・ブチリルコリンエステラーゼ阻害
APL作用・・・allosteric potentiating ligand(アロステリック活性化リガンド)作用
「アルツハイマー型認知症」の進行抑制では軽度、中等度、高度で適応の違いがあります。
また「レビー小体型認知症」の進行抑制はアリセプトのみの適応となっています。
商品名 | 軽度 | 中等度 | 高度 | レビー小体 |
---|---|---|---|---|
アリセプト | ○ | ○ | ○ | ○ |
レミニール | ○ | ○ | ||
イクセロン リバスタッチ |
○ | ○ | ||
メマリー | ○ | ○ |
アルツハイマー型認知症では脳の中に異常なたんぱく質がたまり、老人斑(シミ)や神経原線維変化(神経細胞の中の繊維にねじれ)がみられます。
これらによって脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの量が低下することが記憶障害の原因と考えられています。
アセチルコリンは前シナプスから放出され、シナプス間隙(読み方:しなぷすかんげき)でアセチルコリンエステラーゼ(AChE)によって分解されてしまいます。
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はAChEを阻害しアセチルコリンの分解を防ぎ、脳内でのアセチルコリン量を高め認知症の進行を遅らせると考えられています。
以上が基本的なコリンエステラーゼ阻害薬の作用機序となりますが、ガランタミンとリバスチグミンにはプラスαの作用があります。
ガランタミンはAPL作用といってニコチン性アセチルコリン受容体でのアセチルコリンの反応を増強させる作用を持ちます。
APLはallosteric potentiating ligand(アロステリック活性化リガンド)の頭文字をとったものです。
アセチルコリン受容体にはムスカリン性アセチルコリン受容体とニコチン性アセチルコリン受容体が存在します。
ガランタミンはニコチン性アセチルコリン受容体のアロステリック部位(アセチルコリンが結合しない部位)に結合し、アセチルコリンが結合した時の反応を高める作用(陽イオンの流入を増大)があります。
またガランタミンは前シナプスに存在するニコチン性アセチルコリン受容体にも結合することでシナプス間隙(読み方:しなぷすかんげき)でのアセチルコリン放出を増加させる作用もあるとされています。
このようにニコチン性アセチルコリン受容体でのアセチルコリンの反応を高め、さらにアセチルコリンの放出を増加させるのがAPL作用なのです。
リバスチグミン(商品名:イクセロン・リバスタッチ)はアセチルコリンを分解するAChEだけでなくブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)も阻害することで、脳内アセチルコリン量を増加させます。
NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンは記憶や学習の神経伝達のシグナルを邪魔するノイズを抑える作用があります。
例え話でメマンチンの作用機序を解説していきます。
あなたがある教室で国語の授業を受けているとします。
ある教室ではクラスメイトが騒がしく先生の声をなかなか聞き取ることができません。
周りのノイズに先生の声がかき消され、気が散って、学習に支障がでてきてしまっています。
こんな時に、先生の声を消さずに、周りの騒がしいクラスメイトの声だけを消す薬があっとしたら画期的ですよね?
アルツハイマー型認知症では、神経伝達シグナルを担うグルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDA受容体が過剰に活性化した状態になっており、シナプテックノイズと呼ばれる電気シグナルが常に現れ、記憶や学習に関わるの神経伝達のシグナルがかき消された状態になっています。
騒がしい教室の中で先生の声がかき消されて学習障害が起こっているのと同じような状態ですね。
メマンチンはNMDA受容体をブロックすることで、シナプテックノイズを抑えます。
神経伝達シグナルを担うNMDA受容体を遮断するのですが、記憶や学習に関与する正常なシグナルには影響を及ぼしません。
メマンチンのNMDA受容体に対する親和性は低く、解離速度も速いため、シナプテックノイズのような軽いシグナルはブロックしますが、記憶や学習に関与する強いシグナルの時には、メマンチンはNMDA受容体から離れていくのです。
このように、記憶や学習といった生理的なグルタミン酸神経活動には影響を与えず、周りのノイズ(シナプテックノイズ)だけを抑えるのがNMDA受容体拮抗薬であるメマンチンなのです。
あくまで進行を遅らせる薬であることを伝える
変化がないからといって自己判断で中止しないことをご家族にも説明
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