認知症治療薬一覧(コリンエステラーゼ阻害薬・NMDA受容体拮抗薬)

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

認知症治療薬はコリンエステラーゼ阻害薬NMDA受容体拮抗薬の大きく2つに分類されます。

コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬について一覧、作用機序、服薬指導のポイントをまとめました。

認知症治療薬一覧・規格・作用機序

一般名 商品名 規格 作用機序
ドネペジル塩酸塩 アリセプト
  • 細粒0.5%
  • 錠3,5,10mg
  • D錠3,5,10mg
  • 内服ゼリー3,5,10mg
  • ドライシロップ1%
AChE阻害
ガランタミン臭化水素酸塩 レミニール
  • 錠4,8,12mg
  • OD錠4,8,12mg
  • 内服液4mg/ml
AChE阻害
APL作用
リバスチグミン イクセロン
リバスタッチ
  • パッチ
    4.5 ,9, 13.5, 18mg
     
AChE阻害
BuChE阻害  
メマンチン塩酸塩 メマリー
  • 錠5,10,20mg
  • OD錠5,10,20mg
NMDA受容体拮抗

AChE阻害・・・アセチルコリンエステラーゼ阻害
BuChE阻害・・・ブチリルコリンエステラーゼ阻害
APL作用・・・allosteric potentiating ligand(アロステリック活性化リガンド)作用

 

適応の違い アルツハイマー型認知症(軽度・中等度・高度)・レビー小体型認知症

「アルツハイマー型認知症」の進行抑制では軽度、中等度、高度で適応の違いがあります。

また「レビー小体型認知症」の進行抑制はアリセプトのみの適応となっています。

商品名 軽度  中等度  高度 レビー小体
アリセプト ○  ○ 
レミニール ○  ○     
イクセロン
リバスタッチ
   
メマリー    

 

コリンエステラーゼ阻害薬作用機序(ドネペジル・ガランタミン・リバスチグミンの違い)

アルツハイマー型認知症では脳の中に異常なたんぱく質がたまり、老人斑(シミ)や神経原線維変化(神経細胞の中の繊維にねじれ)がみられます。

これらによって脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの量が低下することが記憶障害の原因と考えられています。

アセチルコリンは前シナプスから放出され、シナプス間隙(読み方:しなぷすかんげき)でアセチルコリンエステラーゼ(AChE)によって分解されてしまいます。

アセチルコリンエステラーゼ阻害薬はAChEを阻害しアセチルコリンの分解を防ぎ、脳内でのアセチルコリン量を高め認知症の進行を遅らせると考えられています。

以上が基本的なコリンエステラーゼ阻害薬の作用機序となりますが、ガランタミンとリバスチグミンにはプラスαの作用があります。

ガランタミン(レミニール)のAPL作用とは?

ガランタミンはAPL作用といってニコチン性アセチルコリン受容体でのアセチルコリンの反応を増強させる作用を持ちます。

APLはallosteric potentiating ligand(アロステリック活性化リガンド)の頭文字をとったものです。

アセチルコリン受容体にはムスカリン性アセチルコリン受容体ニコチン性アセチルコリン受容体が存在します。

ガランタミンはニコチン性アセチルコリン受容体のアロステリック部位(アセチルコリンが結合しない部位)に結合し、アセチルコリンが結合した時の反応を高める作用(陽イオンの流入を増大)があります。

またガランタミンは前シナプスに存在するニコチン性アセチルコリン受容体にも結合することでシナプス間隙(読み方:しなぷすかんげき)でのアセチルコリン放出を増加させる作用もあるとされています。

このようにニコチン性アセチルコリン受容体でのアセチルコリンの反応を高め、さらにアセチルコリンの放出を増加させるのがAPL作用なのです。

リバスチグミン(イクセロン・リバスタッチ)はブチリルコリンエステラーゼ阻害作用あり

リバスチグミン(商品名:イクセロン・リバスタッチ)はアセチルコリンを分解するAChEだけでなくブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)も阻害することで、脳内アセチルコリン量を増加させます。

NMDA受容体拮抗薬(メマンチン)作用機序

NMDA受容体拮抗薬であるメマンチンは記憶や学習の神経伝達のシグナルを邪魔するノイズを抑える作用があります。

例え話でメマンチンの作用機序を解説していきます。

あなたがある教室で国語の授業を受けているとします。

ある教室ではクラスメイトが騒がしく先生の声をなかなか聞き取ることができません。

周りのノイズに先生の声がかき消され、気が散って、学習に支障がでてきてしまっています。

こんな時に、先生の声を消さずに、周りの騒がしいクラスメイトの声だけを消す薬があっとしたら画期的ですよね?

アルツハイマー型認知症では、神経伝達シグナルを担うグルタミン酸受容体のサブタイプであるNMDA受容体が過剰に活性化した状態になっており、シナプテックノイズと呼ばれる電気シグナルが常に現れ、記憶や学習に関わるの神経伝達のシグナルがかき消された状態になっています。

騒がしい教室の中で先生の声がかき消されて学習障害が起こっているのと同じような状態ですね。

メマンチンはNMDA受容体をブロックすることで、シナプテックノイズを抑えます。

神経伝達シグナルを担うNMDA受容体を遮断するのですが、記憶や学習に関与する正常なシグナルには影響を及ぼしません。

メマンチンのNMDA受容体に対する親和性は低く、解離速度も速いため、シナプテックノイズのような軽いシグナルはブロックしますが、記憶や学習に関与する強いシグナルの時には、メマンチンはNMDA受容体から離れていくのです。

このように、記憶や学習といった生理的なグルタミン酸神経活動には影響を与えず、周りのノイズ(シナプテックノイズ)だけを抑えるのがNMDA受容体拮抗薬であるメマンチンなのです。

服薬指導の要点

特徴を伝える

あくまで進行を遅らせる薬であることを伝える
変化がないからといって自己判断で中止しないことをご家族にも説明

服用方法

  • 寝たきりの場合、OD錠は水で服用する
  • 飲み忘れ時の対応を指導
    通常の対応は下記のとおり
    アリセプト・・・気づいた時に服用(半日以上経った場合はとばす)
    レミニール・・・気づいた時に服用(数時間以上経った場合はとばす)
    イクセロン・リバスタッチ・・・気づいた時に貼付(4日以上経った場合は要相談)
    メマリー・・・気づいた時に服用(次回服用と近い場合はとばす)

副作用

  • 悪心・嘔吐・食欲不振などの消化器症状に注意(コリンエステラーゼ阻害薬) 
    特に初回と増量時
  • 消化器症状を防止するためにも食後服用がベター(コリンエステラーゼ阻害薬)
  • 服用初期にめまいが現れる可能性あり(メマンチン)

残薬の確認

  • 残薬が大量にある場合、認知症の周辺症状である拒薬がないかチェック
  • 拒薬がある場合は剤型変更(パップ剤など)を提案

この記事を書いた人

伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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