モンテルカスト錠はモンテルカストチュアブル錠でも調剤可能か?

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Kay (ケイ)

広島大学 薬学部卒 
研修認定薬剤師

気管支喘息やアレルギー性鼻炎に処方される機会の多いモンテルカスト錠

一般名処方の場合、モンテルカスト錠をモンテルカスト口腔内崩壊錠で調剤することは可能ですね。

では、薬局にモンテルカスト錠の在庫がない場合など、
モンテルカスト錠をモンテルカストチュアブル錠で調剤することは可能でしょうか?

結論から言うと変更は「不可」です。

なぜなら、モンテルカスト錠とモンテルカストチュアブル錠には以下の違いがあるからです。

先発品のキプレス錠とキプレスチュアブル錠の添付文書の比較で違いをみていきます。

1. 適応と用法・用量の違い

  キプレス錠 キプレスチュアブル錠
適応 気管支喘息
アレルギー性鼻炎
気管支喘息
用法用量 気管支喘息
成人にはモンテルカストとして10mgを1日1回就寝前に経口投与
アレルギー性鼻炎
成人にはモンテルカストとして5~10mgを1日1回就寝前に経口投与
6歳以上の小児にはモンテルカストとして5mgを1日1回就寝前に経口投与

キプレス錠には気管支喘息とアレルギー性鼻炎の適応がありますが、
キプレスチュアブル錠は気管支喘息のみです。

用法用量については、チュアブル錠に「6歳以上の小児」の記載があります。
通常「小児」とは何歳までをいうのでしょうか?

①新生児とは、出生後4週未満の児とする。
②乳児とは、生後4週以上、1歳未満の児とする。
③幼児とは、1歳以上、7歳未満の児とする。
④小児とは、7歳以上、15歳未満の児とする。 

引用元 薬生安発 0608 第1号 平成29年6月8日
医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項について

上記資料によると15歳未満までを小児としています。
従って、通常6~15歳未満はチュアブル錠、15歳以上は普通錠の処方が検討されることとなります。

2. 服用方法の違い

  キプレス錠 キプレスチュアブル錠
服用方法 水で服用
口腔内崩壊錠(OD錠)は舌の上で崩壊するので、水なし又は水ありで服用できる
口中で溶かすか、噛み砕いて服用

一般的にチュアブル錠は、そのまま飲み込んでしまうと溶けるまでに時間がかかるため、噛み砕いて服用するか、口のなかでなめて溶かしてから服用します。

キプレスではない他の薬の例ですが チュアブル錠を噛み砕いて服用せず、錠剤がその形状を保ったまま、腸管や気管支内に残っていたという例もあります。

噛み砕くことが難しい場合は、事前に砕いてから飲ませることもできます。

剤型については、普通錠と口腔内崩壊錠は同剤としての扱いとなりますが 普通錠とチュアブル錠は別剤の扱いとなります。

そのため、複数の薬剤が処方されている場合、 服用時点が同じでも、普通錠とチュアブル錠は別剤として それぞれ調剤料の算定が可能です
調剤料については、チュアブル錠の他、シダキュアなどの舌下錠も別剤として扱われます。

例えば、下記の処方の場合は、3剤分の調剤料を算定できます。

【例】
Rp.
ザイザル(5) 1錠 分1 就寝前
キプレスチュアブル(5) 1錠 分1 就寝前
シダキュア5,000JAU 1錠 分1 就寝前

3. 体内動態の違い

キプレスチュアブルの添付文書には以下の記載があります。

モンテルカストチュアブル錠はモンテルカストフィルムコーティング錠と生物学的に同等でなく、モンテルカストチュアブル錠はモンテルカストフィルムコーティング錠と比較してバイオアベイラビリティが高いため、モンテルカストチュアブル錠5mgとモンテルカストフィルムコーティング錠5mgをそれぞれ相互に代用しないこと。

引用元 キプレスチュアブル添付文書

それでは、どのように体内動態が異なるのでしょうか?

キプレスチュアブル錠の添付文書を確認すると、
健康成人に対してモンテルカストチュアブル錠10mgとモンテルカストフィルムコーティング錠10mgを投与した試験データの記載があります(n=16)。

モンテルカスト錠・チュアブル錠10mg投与時の薬物動態比較

  チュアブル錠 フィルムコーティング錠
Tmax(hr) 2.0±0.3 4.0±1.4
Cmax(ng/ml) 493.7±83.1 333.4±109.6
t1/2(hr) 4.8±0.3 4.6±0.6
AUC0-∞(ng・hr/ml) 2938.8±583.1 2447.6±779

Tmaxはフィルムコーティング錠がチュアブル錠の倍近い数値となっています。
Cmax、AUC0-∞おいても、フィルムコーティング錠に比べ、チュアブル錠が高い値となっています。

またモンテルカストチュアブル錠5mg及びモンテルカストフィルムコーティング錠10mgを投与したときの生物学的利用率はそれぞれ約73%及び約64%と添付文書に記載があます。

以上から「モンテルカストチュアブル錠はモンテルカストフィルムコーティング錠と比較してバイオアベイラビリティが高い」ということがいえます。

まとめ

  • キプレス錠とキプレスチュアブル錠は相互に代用はできない(変更調剤不可
  • キプレス錠とキプレスチュアブル錠では、適応、対象年齢、服用方法が異なる
  • チュアブル錠は口中でなめて溶かすか噛み砕いて服用する必要がある
  • 普通錠(あるいは口腔内崩壊錠)とチュアブル錠は、別剤としてそれぞれ調剤料の算定が可能
  • キプレスチュアブル錠はキプレス錠に比べて生物学的利用率が高い

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Kay (ケイ)

広島大学 薬学部卒 
研修認定薬剤師

愛媛県出身 
現在は東京在住。

化粧品メーカーの営業・販売員教育職を経て、薬剤師歴16年のアラフィフです。

総合病院の門前薬局、商店街にある下町の調剤薬局、オフィスビルの医療モール内薬局などで幅広い処方箋の応需経験があります。

婦人科、皮膚科、眼科、患者さまとのコミュニケーション術などについて、私なりの視点でお伝えできればと思います。

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