抗不整脈薬の分類はVaughan Williams分類(読み方:ヴォーン・ウィリアムズ)が有名ですね。
Vaughan Williams分類が定められたのは1970年代の前半で、抗不整脈薬を作用機序別にざっくりとグループ分けしたものになります。
Vaughan Williams分類が定められたのはまだ抗不整脈薬が少ない時代だったこともあり、抗不整脈薬が上市されるにつれて問題点が出てくるようになりました。
例えば、アミオダロン(商品名:アンカロン)はVaughan Williams分類ではIII群のKチャネル遮断に分類されますが、Naチャネル、Caチャネル、β受容体に対する抑制作用もあり、厳密にはIII群だけにあてはめることができません。
このように古典的なVaughan Williams分類から脱却するために、ガイドラインで基盤とされているのがSicilian Gambit(読み方:シシリアン・ギャンビット)による分類です。
Sicilian Gambitによる分類はVaughan Williams分類に比べてより細かい作用部位や、Naチャネルからの乖離が速いか、遅いか、中間か、その他のイオンチャネルや受容体に対する相対的な強さなどが比較されています。
つまりVaughan Williams分類の問題点をカバーしたのがSicilian Gambitによる分類なのです。
Vaughan Williams分類別の抗不整脈薬の特徴や作用機序、Sicilian Gambitによる分類の概略、抗不整脈の薬局での服薬指導の要点についてまとめました。
Sicilian Gambitの分類がガイドラインの基盤となっていますが、Vaughan Williams分類も基礎知識として頭に入れておく必要があります。
Vaughan Williams分類を理解するためには心室筋細胞の活動電位について理解しなければいけません。
0相(脱分極相)
Naチャネル開口によるNa+の細胞内の流入
1相(オーバーシュート)
-40mVを超えるとNaチャネルが不活性化しNa+の流入停止
2相(プラトー相)
Caチャネル、Kチャネル開口によりCa2+が細胞内へ流入し、K+が細胞外へ流出し一時的な停滞状態(プラトー)となる。
3相(再分極相)
Kチャネルの開口でK+が細胞外に流出し再分極
4相(静止期)
Na+Ca2+の流出、K+の流入
再分極が終了し次の脱分極までが静止期
活動電位にはどんな刺激にも反応しない絶対不応期と、強い刺激に反応してしまう相対不応期があります。
クラス | 一般名 商品名 |
作用機序 | 特徴 |
---|---|---|---|
Ia | プロカインアミド アミサリン ジソピラミド リスモダン シベンゾリン シベノール ピルメノール ピメノール |
Naチャネル抑制 + Kチャネル抑制 |
活動電位持続時間延長 不応期延長 |
Ib | メキシレチン メキシチール リドカイン キシロカイン アプリンジン アスペノン |
Naチャネル抑制 + Kチャネル開放促進 |
活動電位持続時間短縮 不応期短縮 |
Ic | プロパフェノン プロノン フレカイニド タンボコール ピルシカイニド サンリズム |
Naチャネル抑制 | 活動電位持続時間不変 不応期不変orやや延長 |
II | β1選択性ISA− メトプロロール セロケン ビソプロロール メインテート β1選択制ISA+ β1非選択制ISA− β1非選択制ISA+ |
β遮断 | 不応期不変 |
III | アミオダロン アンカロン |
Kチャネル遮断 | 活動電位持続時間延長 不応期延長 |
IV | ベラパミル ワソラン ジルチアゼム ヘルベッサー ベプリジル ベプリコール |
Caチャネル遮断 | 不応期不変 |
Ia群
0相でのNa+の細胞内への流入を抑えることで、活動電位の立ち上がりを遅らせる。
Kチャネル抑制作用あり。
活動電位持続時間(APD)と不応期を延長。
Iaはムスカリン受容体を遮断する作用があることから口渇、排尿障害、眼圧上昇といった抗コリン作用の副作用が報告されています。
Ib群
0相でのNa+の細胞内への流入を抑えることで、活動電位の立ち上がりを遅らせる。
Kチャネルの開口促進もあり。
活動電位持続時間と不応期を短縮。
Ic群
Naチャネル抑制がメイン。
活動電位持続時間は不変。
β遮断作用により頻脈性の不整脈に有効。
降圧目的で処方されるケースもあり。
心筋細胞β1受容体刺激
↓
アデニル酸シクラーゼ活性化
↓
cAMP増大
↓
内向きCa電流が増加
↓
洞結節などの異常自動能が亢進
β遮断により上記を抑制。
関連記事
【β遮断薬】ISA(内因性交感神経刺激作用)+、-ってどういう意味
Kチャネル遮断により再分極を遅らせ、活動電位持続時間と不応期を延長
→リエントリー性不整脈に効果を示す。
Caチャネル遮断。
Caチャネル依存性の洞結節、房室結節の自動能、伝達能の抑制。
不応期は不変。
Sicilian Gambit(読み方:シシリアン・ギャンビット)による分類では、
イオンチャネル(Na,Ca,K,If)、受容体(α,β,M2,A1)、ポンプに対する作用、
そして臨床効果(左室機能,洞調律への影響,心外性の副作用)、心電図所見(PR,QRS,JT)についてまとめられています。
例えばNaチャネルに対する解離速度をfast(速い)、intermediate(中間)、slow(遅い)で分類されており、遅くなるほどNaチャネルの抑制作用が強くなり、一方で催不整脈の副作用も発現しやすくなります。
fastに分類されるNaチャネル抑制薬
リドカイン
メキシレチン
intermediateに分類されるNaチャネル抑制薬
キニジン
プロカインアミド
プロパフェノン
slowに分類されるNaチャネル抑制薬
シベンゾリン
ジソピラミド
ピルメノール
フレカイニド
ピルシカイニド
表は今日の治療薬やガイドラインにも掲載がありますので、参考にしてみてください。
抗不整脈薬は特定薬剤管理指導(ハイリスク薬)の対象となる薬剤です。
ただし、β遮断薬やCa拮抗薬は降圧剤として処方されている場合は特定薬剤管理指導の対象となりません。
服薬指導での確認項目をピックアップします。
アドヒランス
催不整脈の副作用がないか確認
食事・生活
その他
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。
お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。
コメント欄ご利用についてのお願い
※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます