同じRAA(レニンアンジオテンシンアルドステロン)系に作用するARBとACE阻害剤(以降ACE-I)の違いについて少し考えてみます。
『ARB=咳が起きにくいACE-I』この表現はいかがでしょう??
もちろん一理ありますが、本当にそうでしょうか?? 作用機序を確認してみます。
薬理学上の違い
・アンジオテンシン変換酵素はキニナーゼ。なのでACE-iでこの酵素を阻害するとブラジキニンが増え、キニンレベルが増える。これはARBではみられず。このことが咳の原因となる。ブラジキニンは血管拡張その他ARBにはない作用がある
・アンジオテンシンIIが減るとACE-iはAT1.AT2両者の効果を低下させる。ARBはAT1のみ
薬理学上の違いが大きく違うことにより、実証されてませんが臨床上の差異が生じる可能性はあります
(薬剤師としては薬理学上しっかり違いを理解しておくことが大事だと思います)
製薬会社の売上等資料を見ると、ARBの処方量が増え、ACE-Iの処方量は横ばい、減少傾向にあるのが確認できます。
臨床では認容性の高さ(咳が少ない等)、様々な合剤の発売により、ARBの処方量が増えていることが想像できます。
しかし、薬剤師としては、各病態のガイドラインにおいて、今のところARBがACE-Iより優れているという報告はない(ACE-Iと同等の報告は多くあります)ことをしっかり理解しておきましょう。
【ワンポイントチェック】
心筋梗塞後二次予防についてはACE-i>ARBなの??
上記について日本循環器学会の「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011 年改訂版)」に記載があります。
心筋梗塞二次予防に関するガイドライン(2011 年改訂版)」
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_ogawah_h.pdf
【ARB】
“2010 年 8 月末時点で,心筋梗塞発症予防における確立したエビデンスを有し,かつ「降圧を超えた心保護効果 を有する」ACE 阻害薬に対し,優先して積極的に ARB を使用する根拠は乏しい.このことから日本人における ACE 阻害薬での比較的高い副作用発現率を考慮したとしても,心筋梗塞の二次予防目的における RA 系阻害薬 の第一選択は ACE 阻害薬であると考えられる.
(ガイドラインから一部抜粋)
循環器専門医には当たり前なのかもしれませんが、薬剤師も知識として持っておくことは重要です。
以上でARBシリーズは終わりとなります。
ARB(ACE-I)はただ血圧を下げるだけではなく、多面的な効果を期待して処方されます。しかし患者さんとしては、降圧剤はただ「血圧を下げてくれる薬」と思っている方がほとんどでしょう
そこに、薬剤師が降圧以外の臓器保護作用をしっかり説明し、アドヒアランスを高めていくことが重要です
この機会にご自身の薬局の患者さんを思い浮かべて頂いて、なぜこの降圧薬が使われているのかをもう一度
考えてみてはいかがでしょうか?
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