2016年調剤報酬改定~基準調剤加算・かかりつけ薬剤師制度導入へ

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

こんにちは。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」編集長の伊川勇樹です。

2016年調剤報酬改定に向けて、新たに「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」が設置されることとなりそうです。またかかりつけ薬剤師制度の導入により「基準調剤加算」の算定基準も大幅に変わることになります。

以下に、「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」「基準調剤加算」の算定要件をまとめてみました。

かかりつけ薬剤師指導料の算定要件は?

「かかりつけ薬剤師指導料」の算定要件を厚生労働省が発表しています。

はっきりいってけっこう多いです(>_<)

薬剤師の在籍年数や勤務時間に関してはまだ未発表ですが、認定薬剤師を取得していることがマストになるので、今後認定薬剤師を取得する薬剤師さんが増えてきそうです。

算定要件
(1) 患者の同意の上、かかりつけ薬剤師として服薬指導等の業務を実施した場合に算定する。

(2) 患者の同意については、患者が選択した保険薬剤師をかかりつけ薬剤師とすることの同意を得ることとし、当該患者の署名付きの同意書を作成した上で保管し、当該患者の薬剤服用歴にその旨を記載する。なお、患者の服用薬について、一元的・継続的な管理を推進する観点から患者1人に対して、1人の保険薬剤師のみがかかりつけ薬剤師として算定できる。

(3) 当該指導料は、患者の同意を得た後の次の来局時以降に算定可能とする。

(4) 当該指導料を算定する保険薬剤師は、以下の要件を満たしている旨を地方厚生局長等に届け出ていること。
① 薬剤師として3年以上の薬局勤務経験があり、同一の保険薬局に週32時間以上勤務しているとともに、当該保険薬局に6か月以上在籍していること。

② 薬剤師認定制度認証機構が認証している研修認定制度等の研修認定を取得していること。

③ 医療に係る地域活動の取組に参画していること。(地域の行政機関や関係団体等が主催する講演会、研修会等への参加、講演等の実績)
地域の行政機関や医療関係団体等が主催する住民への説明会、相談会、研修会 等への参加や講演等の実績に加え、学校薬剤師として委嘱を受け、実際に児童・生徒に対する医薬品の適正使用等の講演等の業務を行っている場合が該当する。 なお、企業が主催する講演会等は、通常、地域活動の取組には含まれないと考え られる。 (疑義解釈より追記2016.4.1)

(5) 他の保険薬局及び保険医療機関においても、患者が選択したかかりつけ薬剤師の情報を確認できるよう、手帳等にかかりつけ薬剤師の氏名、勤務先の保険薬局の名称を記載すること。

(6) 患者に対する服薬指導等の業務はかかりつけ薬剤師が行うことを原則と する。かかりつけ薬剤師以外の保険薬剤師が服薬指導等を行った場合は当該指導料を算定できない。

(7) かかりつけ薬剤師は、担当患者に対して、以下の業務を行っていること。
① 薬剤服用歴管理指導料に係る業務を実施した上で患者の理解に応じた適切な服薬指導等を行うこと。

② 患者が服用中の薬剤等について、患者を含めた関係者が一元的、継続的に確認できるよう、患者の意向を確認した上で手帳を用いて当該指導等の内容を記載すること。

③ 患者が受診している全ての保険医療機関の情報を把握し、服用している処方薬をはじめ、要指導医薬品及び一般用医薬品(以下「要指導医薬品等」という。)並びに健康食品等について全て把握するとともに、その内容を薬剤服用歴に記載すること。また、当該患者に対して、保険医療機関を受診する場合や他の保険薬局で調剤を受ける場合には、かかりつけ薬剤師を有している旨を明示するよう説明すること。

④ 患者から 24 時間相談に応じる体制をとり、開局時間外の連絡先を伝えるとともに、勤務表を作成して患者に渡すこと。ただし、やむを得ない 事由により、かかりつけ薬剤師が開局時間外の問い合わせに応じることができない場合には、あらかじめ患者に対して当該薬局の別の薬剤師が 開局時間外の相談等に対応する場合があることを説明するとともに、当該薬剤師の連絡先を患者に伝えることにより、別の薬剤師が対応しても差し支えない。

⑤ 患者が他の薬局で調剤を受けた場合は、その服用薬等の情報を入手し、 薬剤服用歴の記録に記載すること。

⑥ 調剤後も患者の服薬状況の把握、指導等を行い、その内容を薬剤を処方した保険医にその内容を情報提供し、必要に応じて処方提案すること。 服薬状況の把握の方法は、患者の容態や希望に応じて、定期的に連絡で きるようにすること(電話による連絡、患家への訪問、患者の来局時など)。また、服薬期間中に服用中の薬剤に係る重要な情報を知ったときは、 患者又はその家族等に対し当該情報を提供し、患者への指導等の内容及 び情報提供した内容については薬剤服用歴の記録に記載すること。

⑦ 継続的な薬学的管理のため、患者に対して、服用中の薬剤等を保険薬局に持参する動機付けのために薬剤等を入れる袋(いわゆるブラウンバッグ)を必要に応じて配布し、その取組の意義等を説明すること。また、 患者が薬剤等を持参した場合は服用薬の整理等の薬学的管理を行うこととするが、必要に応じて患家を訪問して服用薬の整理等を行うこと。

(8) 薬剤服用歴管理指導料、かかりつけ薬剤師包括管理料又は在宅患者訪問薬剤管理指導料(当該患者の薬学的管理指導計画に係る疾病と別の疾病又は負傷に係る臨時の投薬が行われた場合を除く。)と同時に算定できないこと。

かかりつけ薬剤師包括管理料の算定要件は?

算定要件
(1) 対象患者は地域包括診療料、地域包括診療加算等の算定対象患者とする。

(2) 患者の服薬状況等については、薬学的知見に基づき随時把握して、保険医に対して、その都度情報提供するとともに、必要に応じて減薬等の処方提案を実施すること。 なお、情報提供の要否、方法、頻度等については、あらかじめ保険医と相 談して合意が得られている場合は、当該合意に基づいた方法等によることで 差し支えないこと。

(3) 「かかりつけ薬剤師指導料」の算定要件の(1)~(7)を満たしていること。

(4) 薬剤服用歴管理指導料、かかりつけ薬剤師指導料又は在宅患者訪問薬剤管理指導料(臨時の投薬が行われた場合を除く。)と同時に算定できないこと。

[包括範囲] 下記以外は包括とする。
(1) 時間外等加算、夜間・休日等加算
(2) 在宅医療に係る点数
(3) 薬剤料
(4) 特定保険医療材料料

基準調剤加算はどうなるの?

基準調剤加算に関しては、従来の基準調剤加算Ⅰ(12点)、基準調剤加算Ⅱ(36点)が廃止され、一元化されることになりそうです。

以下、算定基準のポイントをまとめてみました。

・一定時間以上開局していること。 
「一定時間以上開局している」については「平日は1日8時間以上、土曜日又は日曜日のいずれかの曜日には一定時間以上開局し、 かつ、週45時間以上開局していること」を規定する。

つまり、木曜日は昼まで開局の場合は基準調剤加算は算定できなくなります

 

・在宅患者に対する薬学的管理及び指導について、実績を有していること。
⇒従来の基準調剤加算Ⅰでは実績は必要ありませんでしたが、これからは必須となります。

・当該地域において、在宅療養の支援に係る診療所又は病院及び訪問看護ステーションとの連携体制が整備されていること。

・当該地域において、他の保健医療サービス及び福祉サービスとの連携調整を担当する者との連携体制が整備されていること 。

・かかりつけ薬剤師指導料又はかかりつけ薬剤師包括管理料の施設基準の届出を行っていること。
⇒これによりハードルはかなり上がりますね。

・特定の保険医療機関に係る処方せんによる調剤の割合が9割を超える場合であって、当該保険薬局において調剤した後発医薬品のある先発医薬品及び後発医薬品を合算した薬剤の使用薬剤の薬価(薬価基準)別表に規定する規格単位ごとに数えた数量(以下「規格単位数量」という。)に占める後発医薬品の規格単位数量の割合が3割以上であること。
⇒特定の病院からの集中率の高い薬局はジェネリックの使用割合も一定基準をクリアしなければいけなくなります。

基準調剤加算の算定要件はこちらに詳しく書きました。
・関連記事
平成28年以降の基準調剤加算の算定要件は?

 

まとめ

僕が新米の薬剤師のころ、ある教育担当の薬剤師さんが「今後は薬局でなく薬剤師に点数がつく時代だ」と言っていたのを思い出しました。地域包括ケアシステムの推進のために、「地域から頼られる薬剤師がいること」が必須になってきます。

報酬改定をみていると、薬剤師がオーナーで、オーナー自身が現場に立つ薬局に追い風が吹いてくるように感じています。

一方で中規模~大手調剤チェーンは出店ありきで拡大してきた傾向にありますが、今後は「その地域で働く人ありき」に変わらなければいけないと思います。出店によって、薬剤師をコロコロ配置転換するのでなく「いかに地域に根付ける薬剤師を育成できるか?」が課題となりそうです。

・関連記事
認定薬剤師を取得するには?

2016年(平成28年)調剤報酬改定の点数について

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伊川勇樹(いかわゆうき)

株式会社ティーダ薬局 代表取締役・管理薬剤師
薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」管理者

2006年 京都薬科大学 薬学部卒。

調剤併設ドラッグストアのスギ薬局に新卒で入社。
調剤部門エリアマネージャーを経験後、名古屋商科大学院経営管理学修士課程にて2年間経営学を学び、経営管理学修士号(MBA)を取得。
2013年4月、シナジーファルマ株式会社を設立。
2013年8月、薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」をリリース。

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」は臨床で役立つ学術情報や求人広告を発信し月間24万PV(2023年6月時点)のアクセスが集まるメディアとして運営中。

2021年より福岡県北九州市にてティーダ薬局を運営(管理薬剤師)。

1983年11月 岡山県倉敷市で生まれ、水の都である愛媛県西条市で育つ。
大学より京都・大阪で14年間、沖縄Iターン特集立ち上げのため沖縄県で4年間暮らし、現在は福岡県民。
二児の父親。

当面の目標は、
「息子達の成長スピードに負けないこと」

座右の銘は、
「まくとぅそうけい なんくるないさ」
=「誠実に心をこめて精進していれば、なんとかなる!!」

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