中小調剤薬局における新卒薬剤師採用について

この記事を書いた人

澤 志信(さわ しのぶ)

薬剤師
帝京大学薬学部卒

皆さん、こんにちは。
薬剤師ライターの澤です。

私は、前職では大手調剤薬局で新卒採用を担当しておりました。
そして、現在は独立して調剤薬局を経営しています。

前職の採用担当者としての経験と、現在の薬局開設者の立場の両方からこの記事を書いていきたいと思います。

中小薬局は新卒薬剤師採用に苦戦

中小企業で薬剤師の採用に苦戦しているところは相変わらず多いと思います。

人材採用がままならず事業拡大を断念している企業様もいらっしゃるのではないでしょうか。
2018年の調剤報酬改定は大手企業に厳しいものとなったため、われわれ中小企業に追い風が吹いているのではとも感じられます。

何年も採用活動やってるんだけどなかなか新卒がはいんないんだよなぁ、という方。

ちょっとの間違いに気づかずに、その追い風にうまく乗ることができていないのではないでしょうか。

試しに読んでみてください。

新卒採用に成功し、中小の薬局がさらに活性化すること願ってこの記事をかくこととしました。
なお、就職活動中の薬学生はこの記事を読まないことを前提に進めてまいります。

就職活動の薬学生とのランチに選ぶお店は?

早速ですが、問題です。

あなたの薬局に就職活動中の薬学生が店舗見学に来ています。
時間はお昼時。
一緒にお昼ご飯を食べることになりました。

どこの店に行きますか?

A. 近所の定食屋
B. 街道沿いのファミレス
C. 繁華街のすし屋

正解は一番最後に書きます。

まず、現在の就職活動生は薬学部ですと5年生ということになります。
その5年生は2018年時点だと平成7年生まれです。

では平成7年の出生数はご存じでしょうか。
約118万人です。

第2次ベビーブームの昭和48年の出生数が209万人ですから半分近くまで減っています。

それに対して薬学部は増えに増えました。
要するに、今の薬学部の就職活動生は厳しい受験戦争で勝ち抜いて薬学部に入ったというわけではないということがわかります。

四年制の時に比べると実習が充実してより現場に近い教育がなされていると感じます。
私が新卒の時は調剤の手技もあまりわからず、商品名と一般名が一致しなくて苦戦しました。

用法、用量も大学で学んだ記憶はなく、処方の用法間違いに気付けるようになるまでに相当の時間がかかりました。

いまの新卒はそういったことはありません。
採用しても何から何まで教える必要はないですね。
現場としてはありがたい限りです。

入学時の学力はたしかに低下しています。
薬学部の偏差値をみてみるとその低さにびっくりするでしょう。

しかし、実務実習を含め、六年制教育のカリキュラムが功を奏し医療現場では即戦力に近い状態で卒業してきますので、その後の教育は楽になりました。

薬学部に入った多くの理由が親のススメ

では、なぜ薬学部に入ったのでしょうか。
なぜ薬剤師を目指したのでしょうか。

その理由は40代の私には思いもよらないものでした。

医薬分業の進展に伴い、われわれ薬剤師は縁の下の力持ちから、服薬指導という表舞台に立つことになりました。

平成7年といえば保険薬局は3万件くらいまで増えていた時期です。
調剤薬局の薬剤師にあこがれて薬学部を目指したという学生も多くみられます。
これは大変喜ばしいことです。

しかし、それと同時に意外と多いのが、“親の勧め”です。
保険薬局が増えていくに従い、薬剤師の求人を多く目にしたのでしょう。

「薬剤師になれば安定している。」
「就職先に困らない。」
「としをとっても転職できる。」

そのように評価されてしまったのでしょうね。

バブル後で日本の経済があまりよくない時代でしたから特に目立ったのかもしれません。
とにかく親に勧められたという理由がとても多いのに驚かされます。

薬学生との共通言語は地域包括ケアシステム

そうした薬学生は、大学ではどのような教育を受けているのでしょうか。

中心となっているのは厚生労働省の掲げる“地域包括ケアシステム”です。
地域包括ケアシステム??なんか聞いたことあるけど・・・。

くらいの理解の方、ヤバイです。

薬学生にとってはこの言葉はミミタコです。
本当です。

この地域包括ケアシステムについて理解しておかないと将来性のない薬局とみなされます。

おそらく学生と会話も続かないでしょう。
厚生労働省のHPを熟読しておきましょう。

要するに様々なサービスを受けながらも、なるべく住み慣れた街で最期を迎えましょうということですね。
そして医療現場に関しては入院から在宅医療へという考えにつながるわけです。

なじみの定食屋をつくることから始めよう

最後に問題の答えをお教えいたします。

A. 近所の定食屋

です。

社長が自ら採用活動を行うと

C. 繁華街のすし屋 

を選ぶ傾向があるように思います。

選択肢にはありませんがステーキも同様です。

理由は、うちの会社はもうかってるんだぜアピール、そして、学生だからたまにはうまいもん食わしてやっか。
みたいな感じですかね。

学生さんはなぜ薬学部に行ったのでしょうか。

そうです。
安定していると親に勧められていったのです。

薬剤師になればお金持ちになれるとは思っていません。
贅沢な生活にも興味ありません。
そういう世代なんです。

そして労働人口が減っている現在、人材採用がうまくいっていない企業は薬局以外にもたくさんあって1人で1.5人分かそれ以上の仕事をさせられている人もたくさんいます。

そういう目にはあいたくないと考えているんです。
要するに会社が儲かっているか、定年まで働けるかということは学生にはどうでもいい話なんです。

では、

B. 街道沿いのファミレス 

はどうでしょうか。

ゆっくりと話をするなら好適な場所ですね。

給与など店舗で話にくいことも話せると思います。
何がいけないのでしょうか。

そういった話はお昼ご飯をとりながらする話ではないということです。

重要な話をするときには書類、資料がつきものですね。

食事の並んだテーブルの上に資料をひろげるのは好ましくないですよね。

女性の場合は、オーラルケアを気にして食後に話をすることに抵抗を感じるひともいます。
店舗では話せない重要な話をするのであれば、ティータイムに飲み物とちょっとしたケーキくらいでファミレスを利用するべきだと思います。

昼食をとる場所としてより好ましいのは A.近所の定食屋 です。

なにがいいのでしょうか。
もうお気づきですね。
地域包括ケアシステムです。

みんなが住み慣れた街で最期を迎えられるようにするんでしたよね。

近所の定食屋さんも自宅で最期が迎えられるようにあなたの薬局がサポートしなければいけないんです。
定食屋さんを顧客にするためには、あなたが定食屋の顧客になることが一番の近道です。

定食屋さんで

「最近血圧はどう?」
「腰の痛みはどう?」

なんて会話ができれば、地域に根差した薬局だと学生も魅力に感じるはずです。

いかがでしたでしょうか。

私見ではありますが私の新卒採用メソッドの一部をお伝えいたしました。

まずは学生が店舗見学に来た時に連れていけるような、なじみの定食屋をつくることから始めてみてはいかがでしょうか。

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澤 志信(さわ しのぶ)

薬剤師
帝京大学薬学部卒

17年間勤めた大手調剤薬局の会社を退職し、2017年にはれて独立いたしました。
大手調剤薬局では新卒採用にも従事。
前職での経験と、新米薬局経営者として感じるところを発信していければと思っております。

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