UHクリーム作り方・原料・価格【薬局製剤】

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うき

薬剤師

「U・Hクリーム」といえば薬学生が薬局実習で薬局製剤体験をする時は必ず製造する品目ではないでしょうか。

また薬剤師会主催の研修会でも、選ばれる品目のひとつです。

その理由は、原料が2つと少ないこと、製造工程が簡単なわりに、調剤とは異なる作業なので製造している実感を得やすいからだと思います。

U・Hクリームについて特徴や作り方、原料価格、販売方法について解説したいと思います。

U・Hクリームの処方の解説

U・Hクリームは、皮膚の水分保有力を増す働きのある尿素Urea)を、親水クリームHydrophilic Cream)に練合した皮膚の角化症に用いる外皮用薬です。

親水クリームを基剤としているのでやわらかくのびが良い、使用感さわやかなクリームです。

寒い季節に肌が乾燥してかゆくなる方、かかとがひび割れする方に重宝されています。

OTCのクリームは香料を加えたり、カンフルやメントールで清涼感を出しているものが多いのですが、においのないものを求めるお客様もいらっしゃいますので、無添加というのも特徴になります。

使用上の注意は、他の尿素クリームと同様に、潰瘍、びらん、傷面、粘膜、目の周りに使用しないこと等です。

薬局製剤業務指針解説

 

処方(U・Hクリーム 【156】外皮用薬67-①)

  • 尿素 10.0g
  • 親水クリーム 適量

全量 100g

製造方法

上記をとり、クリーム剤の製法により製する。
少量の親水クリームを加温溶融したものに尿素を溶解し、残余の親水クリームによく練合して全質均等として製する。

用法及び用量

1日数回、患部に塗擦する。

効能又は効果

手指のあれ、ひじ・ひざ・かかと・くるぶしの角化症、小児乾燥性の皮膚、老人の乾皮症、さめ肌

貯蔵方法

遮光した気密容器

用意するもの

  1. カセットコンロまたは電気コンロ
  2. 加熱容器
    湯煎用なべ、寸胴なべ、2000ml位のステンレスビーカーなど、湯煎できればどれでもよい。サーモスタット付ウォーターバスがあればコンロは不要。
  3. ビーカー
  4. かき混ぜ用スプーン又は薬さじ
  5. 軟膏ベラ
  6. 棒状温度計(100℃まで測れるもの)
  7. アルミホイル
  8. 軍手

 U・Hクリームの作り方とコツ

  1. 親水クリームをビーカーに入れ、湯煎して完全に溶けるまで加熱します。
    水分が蒸発しやすいので、アルミホイル等でふたをして、水分の減少を防ぎましょう。
  2. 親水クリームが溶解したら加熱を止め、尿素は攪拌しながら少しずつ加えます。
    一度溶けた親水クリームは50℃くらいまでは固まらないので慌てなくても大丈夫です。
  3.  固まるまで手を休めず攪拌を続けます。
    攪拌しながら固めることで均一の濃度になります。
  4. その後、軟膏容器に分注します。
    すぐに分注することも可能ですが、固まった直後は硬く、3日目位から柔らかくなりますので3~7日放置してから分注するのがオススメです。さらに手間をかけて、毎日2回練合し3日目に分注するやり方もあります。
  5. 確認試験。ラベルに製造番号等を記入。添付文書を入れて封緘。製造記録。

※薬局製剤業務指針解説と製造方法が異なっていますが、薬局製剤・漢方委員会で行っている作り方を解説いたしました。

 

薬局製剤の包装と価格

販売価格は薬局ごとに自由に決めることができます。
原材料費を考慮して設定しましょう。

自家製品ということで安価で提供するやり方もあれば、逆にPB商品の価値として高めに設定にするやり方もあります。
個々の薬局の考え方次第です。

U・Hクリーム原料価格目安(100g包装品として製造する場合)

尿素 税抜1030円(500g) 
親水クリーム 税抜1040円(500g)
で仕入れた場合

原料名 値段
尿素10g 20.6円
親水クリーム90g 187.2円
軟膏容器100gまたは120g 59~81円
薬袋、添付文書、シール等 20~30円
合計 286.8~318.8円

参考までに、私がネット検索で確認できた範囲では、下記の通りです。

  • 最安値50g包装500円(10円/g)
  • 最高値30g包装1100円(36.6円/g)

ちなみに、尿素配合の薬局製剤には下記の製剤もあり、それらを製造販売している薬局もあります。

  • 「U・E・Hクリーム」
    尿素5%、トコフェロール配合クリーム
  • 「U20・ローション」
    尿素20%配合ローション

U・HクリームのPRポイント

U・Hクリームを薬局で販売するときのPRポイントです。

  • 薬剤師が心を込めて手作りしています。
  • 手練りだから、のびが良くなめらか。
  • 無香料、無添加。
  • 処方せんなしで購入できます。
  • 許可を得た薬局だけでしか手に入らない薬。

U・Hクリームの類似薬

尿素入りの処方薬、市販薬について参考にピックアップします。
U・Hクリームの薬局製剤は10%製剤のみですが、類似薬では10%の規格がないものは20%を掲載いたします。

処方薬

  • ケラチナミンコーワクリーム20% 
    25g、50g、500g 
    薬価6.3円/g
  • ウレパールクリーム10%
    20g、50g、500g 
    薬価6.1円/g
  • パスタロンクリーム10%
    20g、50g、500g  
    薬価6.1円/g
  • (後)アセチロールクリーム10% 
    20g、50g、500g
    薬価4.7円/g
  • (後)ウリモックスクリーム10% 
    20g
    薬価4.7円/g
  • (後)ベギンクリーム10% 
    20g、500g
    薬価4.7円/g

薬価は2018年時点

OTC医薬品

  • ケラチナミンコーワ20%尿素配合クリーム  
    60g 1500円、150g 2000円
  • 資生堂・尿素10%クリーム
    60g 500円、100g 750円
  • パスタロンM20% 
    30g 800円、60g 1380円、100g 2000円
  • メディターム10%尿素クリーム 
    70g 1500円、150g 1750円
  • パスタロンクリーム-L(尿素4%配合で顔にも使用できる)
  • ケラチナミンアロマハンドクリーム(尿素10%配合でローズ、ラベンダー、ジャスミンの香料入り)

など、様々な製品が一般販売されています。

おわりに

薬局製剤をはじめるなら、まずは「U・Hクリーム」というくらい全国的に製造されています。

「OTCにも処方薬にもあるのに製造する意味あるのかな?」 そんな風に私は、はじめは思いながらも、「とりあえずU・Hクリーム」という感覚で申請しました。

でも今は愛着をもって製造しています。

ありふれた薬ですが、ミニマムな原料で作られる薬とその価値は、私たち薬剤師が作り続け、守っていかないとなくなってしまうのではないでしょうか。

参考資料

  • 薬局製剤業務指針 第6版
  • 日本薬剤師会雑誌 第52巻 第3号 「作ってみよう薬局製剤 U・E・Hクリーム」
  • 「始めてみよう薬局製剤概説、調製、包装、販売」
     大阪府薬剤師会漢方・薬局製剤委員会(松原市イソノ薬局・磯野元三先生)

この記事を書いた人

うき

薬剤師

東京薬科大学 薬学部卒

大学卒業後、製薬メーカー学術、中規模調剤薬局チェーンを経て、1999年地元で面分業の調剤薬局を開局。
2017年調剤業務を終了させ相談薬局として再スタート。
漢方薬、サプリメント、薬局製剤がメイン。まだまだ勉強の毎日です。

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