薬局製造販売医薬品(薬局製剤)のはじめかた

この記事を書いた人

うき

薬剤師

9 追加しなければならない設備・器具

薬局開設の申請時にそろえたであろう設備・器具は、そろっているという前提で、薬局製剤の申請において追加で求められる器具がありますので、その解説をいたします。

イ 顕微鏡、ルーペ又は粉末X線回折装置
ロ 試験検査台
ハ デシケーター
ニ はかり(感量1ミリグラムのもの)※
ホ 薄層クロマトグラフ装置 ※
ヘ 比重計又は振動式密度計
ト pH計 ※
チ ブンゼンバーナー又はアルコールランプ
リ 崩壊度試験器 ※
ヌ 融点測定器
ル 試験検査に必要な書籍

※【ニ】【ホ】【ト】【リ】は、薬剤師会の試験検査センターとの契約をしていれば省略できます。
これら必須の器具以外にも、坐薬や漢方薬や、それぞれ使用する器具がありますので、自分が製造する薬に合わせて揃えるとよいでしょう。

以下

①使用目的
②購入先
③価格

の詳細です。

【イ】 顕微鏡、ルーペ(粉末X線回折装置は高すぎるので省略)
① 漢方薬の確認試験に使用。
② amazon他ネットショップ
③ 1000円台~

【ロ】 調剤台を用いることができます

【ハ】 デシケーター
① 防湿庫。乾燥させて保管する容器。
② 医薬品卸経由で機器メーカー
③ ガラス製 約4000~5000円   
ポリカーボネート製 約9000~30000円

【ヘ】比重計(振動式密度計は省略)
① 密度を測定する器具。液体用に浮秤が使われます。液体に浮かべて目盛りを読み取るものです。
② 医薬品卸経由で機器メーカー
③ 1000~2000円
参照 株式会社安藤計器製工所

【チ】ブンゼンバーナー、アルコールランプ
① 加熱ほか
② 医薬品卸経由または、amazon、モノタロウなどネットショップ。
③ ブンゼンバーナー 約2000円~  
アルコールランプ 約400円~

【ヌ】 融点測定器
① 確認試験における融点測定
② 医薬品卸経由または、amazon、モノタロウ、アスクルなどネットショップ。
③ 融点測定器となると10万円以上になりますが、フラスコを使う基本的な融点測定で可能。
融点測定用三口フラスコ 10000円前後

【ル】書籍「薬局製剤業務指針」 
定価25920円(税込)日薬会員価格23300円(税込)

10 医薬品原料、包装資材の仕入れ先

医薬品原料
局方品
各医薬品卸

局方品orその他医薬品原料
寧薬化学工業株式会社  
〒638-0035 奈良県大和高田市旭南町2番25号
TEL 0745-52-0833  
FAX 0745-22-5031

信永産業株式会社 
〒103-0022 東京都中央区日本橋室町1-13-4
TEL 03-3279-0028   
FAX 03-3242-0380

漢方薬の原料(生薬)
栃本天海堂、吉見製薬、ウチダ和漢薬などの漢方薬原料メーカー

原料の中には、製造中止で入手困難になる事もありますので、品目申請の前に入手可能かどうかご確認ください。

包装資材
株式会社 オオノ   
〒132-0031 東京都江戸川区松島3-43-2
TEL 03-3652-0102(代)  
FAX 03-3653-3610
外用剤の容器(軟膏容器だけでなく、液剤用も各種)、薬局製剤専用の薬袋や折箱、シール、漢方薬袋、など扱いがあります。

シンショウ、アスクル、エムアイケミカル、金鵄製作所ほか、調剤用の容器類の取り扱い会社など。

自分でパソコン・プリンターを利用して作成したり、印刷会社に依頼してオリジナル包装やシールを作ることも可能です。
予算や技量に合わせて工夫、挑戦してみるのも薬局製剤の醍醐味です。

11 薬局製剤における一連の手順

製造する
原料の入手


秤量・混和
原料の数だけくり返す

ろ過・混和

秤量
全量を秤量し、出来高を記録

分包・分注

試験
確認試験、定量試験、重量偏差試験など。薬局内で実施が難しい試験は、各都道府県薬剤師会の試験検査センターに相談してください。

製品化する

  1. 表示ラベル・必要事項の記入・添付文書
    製造した医薬品   

    表示ラベル
    必要事項の記入(製造番号、使用期限、製造販売者、販売名ほか)   

    添付文書
    業務指針を購入するとダウンロードできます。
  2. 薬袋に入れる
    必要事項の記入
  3. 包装・封緘
    開封後は元に戻せない状態にする
  4. 製造記録
    3年間の保存

※製造記録とは、医薬品医療機器等法施行規則第90条において、義務付けられている「製造および試験に関する記録」です。
適正に製造管理および品質管理されている客観的証拠になります。
様式に決まりはありませんが、業務指針や参考資料等に掲載されたものがあります。 自分で使いやすいように様式を作ることができます。

記載内容

  1. 管理者名と製造した作業者名
  2. 製造開始年月日および製造終了年月日
  3. 製造過程およびこれらの中における各工程の管理状況(温度、湿度など)
  4. 製造数量および使用した原料の数量、メーカー名、ロット番号
  5. 試験の年月日およびその成績
  6. 原料および製品の保管状況

販売・管理する
貯蔵・陳列
現物は調剤室に。店頭では空箱やポスター等でPRを。

販売
薬剤師が書面を用いて対面販売が基本
特定販売(インターネット販売)も可能。

販売記録
2年間の保存。第一類医薬品と同様に。

※参考資料:「始めてみよう薬局製剤概説、調製、包装、販売」
大阪府薬剤師会漢方・薬局製剤委員会(松原市イソノ薬局 磯野元三先生)

12 販売とその後

薬局製剤は、GMP省令の適用外ですが、品質管理に万全を期さなければなりません。

製造物責任法(PL法)に該当します。

副作用報告義務(PMS)があります。

医薬品医療機器総合機構法により「副作用拠出金」と「安全対策等拠出金」を年1回申告・納付の義務があります。最低納付金額は各々1000円です。

製造業、製造販売業の許可更新は6年ごとです。

13 おわりに

薬局製剤をゼロから始める方法をご紹介いたしました。

でも調剤を行っている薬局は、すでに薬局開設許可を取っていますので、本当のゼロからではありません。

もう一歩ふみ出すだけです。

ふみ出すには、手続きや準備があり、スタート後は、手間ヒマかかります。

調剤業務と並行して行うのは大変そうと思うでしょう。

私もそう思っていて、ひとり薬剤師で調剤をしている時は取り組む気持ちを持てませんでした。

でも、調剤をしている店舗だからこそ、患者さんに注目され売れる薬局製剤もあると思います。

それは調剤をやめてから感じたことです。

たとえ1品目だけでも、その薬局のオリジナル医薬品を確立し、それが患者さんに支持されたら、かかりつけ薬局効果にもなります。

薬局製剤は、たとえるなら、工場のパンではなくお店で焼くパンです。

自分の薬局で作る「くすり」はじめてみませんか?

この記事を書いた人

うき

薬剤師

東京薬科大学 薬学部卒

大学卒業後、製薬メーカー学術、中規模調剤薬局チェーンを経て、1999年地元で面分業の調剤薬局を開局。
2017年調剤業務を終了させ相談薬局として再スタート。
漢方薬、サプリメント、薬局製剤がメイン。まだまだ勉強の毎日です。

記事作成のサイトポリシーについてはコチラ

この投稿者の最近の記事

「うき」のすべての投稿記事を見る>>

コメント欄ご利用についてのお願い

  • 薬剤師、薬学生、調剤事務、医師、看護師といった医療に携わる方が使用できるコメント欄となります。
  • 「薬剤師の集合知」となるサイトを目指していますので、補足・不備などございましたらお気軽に記入いただけると幸いです。
  • コメントの公開は運営者の承認制となっており「他のユーザーにとって有益な情報となる」と判断した場合にのみ行われます。
  • 記事に対する質問は内容によってお答えできないケースがございます。
  • 一般消費者からの薬学、医学に関する相談や質問は受けつけておりません。

CAPTCHA


※コメントはサイト管理者の承認後に公開されます

薬剤師専門サイト「ファーマシスタ」のFacebookページに「いいね!」をすると、薬剤師が現場で活躍するために役立つ情報を受け取ることができます。ぜひ「いいね!」をよろしくお願いします。

お客様により安全にご利用いただけるように、SSLでの暗号化通信で秘匿性を高めています。

ページトップに戻る