薬局製造販売医薬品(薬局製剤)のはじめかた

この記事を書いた人

うき

薬剤師

OTCと薬局製剤をメインとする薬局を経営しております薬剤師うきと申します。

もともとは処方箋調剤を受け付けていましたが、薬局製剤を扱う相談薬局に方向転換しました。

薬剤師の皆様は、薬局製剤についてどのようなイメージを持っていますか?

薬局製剤は、許可を受けた薬局でしか製造も販売もできない薬です。

まさに、その薬局のオリジナルなプライベートブランド商品です。

医師の処方箋が不要で、薬剤師の判断で販売できますので、セルフメディケーションに重要な役割を果たす医薬品といえます。

現在、薬局製剤を扱う薬局は全薬局の中で、1~2割程度しかありません。
薬剤師の職能を存分に発揮できる分野でありながら、もったいないと思いませんか?

はじめて薬局製剤を取り扱う薬剤師に向けて、私の経験を役立てていただきたいと思い、下記の目次にそって記事にしたいと思います。

  1. 薬局製剤をはじめたきっかけと決心
  2. 薬局製剤とは?
  3. どんな薬がどのくらいあるの?
  4. どんな製剤から取り組めばいいのか?
  5. 薬局製剤の4つの個性
  6. 薬局製剤を学ぶ方法
  7. 新たに始めるときの申請・届出について
  8. はじめるための費用はどのくらいかかる?
  9. 追加で準備しなければならない設備・器具
  10. 原材料、包装資材の仕入れ先
  11. 薬局製剤における一連の手順
  12. 販売とその後
  13. おわりに

1 薬局製剤をはじめたきっかけと決心

私が薬局製剤に興味を持ったきっかけは、近隣薬局で購入していた患者さんのお話からでした。


患者さん

〇〇薬局の風邪薬がすごくよく効くのよ。あの薬局で作っていて、あそこにしかないのよねぇ。

と教えてくれました。

それ以来、薬局製剤を自分も手がけてみたいという思いをずっと心に秘めておりました。

そして2017年に調剤業務を辞めると同時に薬局製剤をスタートさせる決意をしたのです。

その時、例の近隣薬局はすでに閉局しておりましたので、分からないことをどこに聞けばよいのかさえ分からない状態でした。

それでも、業務指針に載っている薬局製剤処方をひとつひとつ見ながら、どれにしようかな~と考えるのは心がワクワクときめく時間でした。

そのあとは、インターネットで調べたり、薬剤師会や先陣の先輩方の助言をいただきながら、試行錯誤しつつ、進めてまいりました。

まだまだ販売品目も売り上げも少なく、勉強中ではありますが、自分の体験に基づいた薬局製剤ストーリーをお伝えできればと思います。

2 薬局製剤とは?

薬局製剤の正式名称は「薬局製造販売医薬品」です。

薬局の構造設備及び器具をもって、混和、溶解等の簡単な物理的操作で製造することができる医薬品(質的要件)で化学合成するものではありません。

薬局管理者が、その製造に完全な管理をすることができる限度で、薬局業務に支障を生じることのない規模で製造します(量的要件)。

卸売りするほどの量産は不適ということです。

医薬品分類としては、医療用医薬品と共に「薬局医薬品」に位置づけられています。

厚生労働省・医薬食品局長通知等により「薬局製剤業務指針」に定められてる処方の中から自ら選定して、容量、包数、価格を設定します。

3 どんな薬がどのくらいあるの?

薬局製剤の総品目数は下記の429品目が存在します。(平成29年9月時点)

  • 西洋薬
    内服(散剤、液剤、カプセル剤)
    外用(塗布剤、貼付剤、含嗽剤、坐剤、消毒剤)
    184品目
  • 漢方薬
    236品目
  • 承認不要品目 
    9品目

西洋薬薬効別一覧

西洋薬の薬効別一覧です。

  1. 催眠鎮静薬(3種類)
    催眠剤1号A、催眠剤2号A、鎮静剤1号A
  2. 鎮暈薬(2種類)
    よい止め1号、よい止め2号
  3. 解熱鎮痛薬(10種類)
    解熱鎮痛剤1号A、解熱鎮痛剤8号A、解熱鎮痛剤9号ほか
  4. かぜ薬(10種類)
    感冒剤1号A、感冒剤13号A、こども感冒剤1号Aほか
  5. 眼科用薬(1種類)
    硫酸亜鉛点眼液
  6. 耳鼻科用薬(1種類)
    ナファゾリン・クロルフェニラミン液A
  7. アレルギー用薬(6種類)
    アレルギー用剤4号、クロルフェニラミン・カルシウム散、鼻炎薬1号Aほか
  8. 鎮咳・去痰薬(14種類)
    鎮咳去痰剤1号、鎮咳去痰剤14号、鎮咳剤15号ほか
  9. 吸入剤(2種類)
    吸入剤1号、吸入剤2号
  10. 歯科口腔用薬(7種類)
    ピオクタニン液、アズレンうがい薬、ポビドンヨード・グリセリン液ほか
  11. 胃腸薬(38種類)
    胃腸鎮痛剤1号、制酸剤1号、下痢止め3号、整腸剤1号、便秘薬、健胃剤2号Aほか
  12. 外用痔疾用薬(3種類)
    ヘモ坐薬1号、ヘモ坐薬2号、ヘモ軟膏1号
  13. 外皮用薬(78種類)
    インドメタシン1%外用液、デキサメタゾン・Hクリーム、クロトリマゾ-ル液、ステアリン酸・グリセリンクリーム、イオウ・カンフルローションほか
  14. 駆虫薬(2種類)
    カイニン酸・サントニン散、サントニン散
  15. ビタミン主薬製剤(6種類)
    混合ビタミン剤1号、混合ビタミン剤5号ほか
  16. その他(1種類)
    内用皮膚剤1号A

承認不要品目 9品目一覧

  1. 吸水クリーム
  2. 親水クリーム
  3. 精製水
  4. 単軟膏
  5. 白色軟膏
  6. ハッカ水
  7. マクロゴール軟膏
  8. 加水ラノリン
  9. 親水ワセリン

4 どんな製剤から取り組めがいいのか

これだけ薬局製剤の種類が多いと

「何の製剤から取り組めばいいのかわからない」
「どんな製剤がニーズがあるのか?」

といった疑問がでてくるのではないでしょうか。

日本薬剤師会や薬局製剤の備品メーカーの情報を参考にメジャーな製剤についてご紹介していきます。

取り組みやすい10例について(日本薬剤師会)

薬局製剤・漢方委員会で選定した処方で、患者さんのニーズと製造しやすさ、薬局製剤の特徴が生かせるという観点から、「取り組みやすい10例」が選ばれています。

日本薬剤師会から出ている「薬局製剤を活用してみませんか!?改訂版」冊子に製造方法が具体的に書かれています。

以下が取り組みやすい10例になります。

  • 解熱鎮痛剤12号A
  • 感冒剤13号A
  • 便秘薬
  • クロトリマゾール・M軟膏
  • ステアリン酸・グリセリンクリーム
  • デキサメタゾン・C・P・V軟膏
  • 葛根湯
  • 柴胡桂枝湯
  • 五苓散
  • 桂枝茯苓丸

株式会社オオノ売り上げランキング

株式会社オオノ様は、医療用品、印刷、容器、薬局製剤用品の製造・販売の会社です。

薬袋やシールその他の売り上げから独自に統計したランキングで、「みんなはどんな薬局製剤を作っているのだろう」という薬剤師の疑問に応えて作成してくれたものです。
ありがたいですね。

集計は2013年と古いものになりますが、参考にご紹介します。

1位 感冒剤3号A
2位 感冒剤13号A
3位 鎮咳去痰剤13号
4位 インドメタシン1%外用液
5位 解熱鎮痛剤2号A
6位 ヒドロコルチゾン・ジフェンヒドラミン軟膏
7位 GL・P・Z液 (汗疹・皮膚炎用薬)
8位 便秘薬
9位 鎮咳去痰剤8号
10位 催眠剤2号A

サイトにはベスト20まで掲載してありますので、参考にしてくださいね。

薬剤師が選んでいる人気商品セレクトテン
私がネットで情報収集している中で、多くの薬局で選ばれているものを自己流でカウントしました。

ネットには掲載していないけれど製造している薬局、検索でヒットしなかった薬局もあると思いますので、すべてを網羅できているわけではありません。ご了承願います。

それぞれの薬局ごとに、薬袋のデザインや容器、説明キャッチフレーズに工夫されていて、感銘いたしましたし、刺激を受けました。

  • 感冒剤13号A
  • U・Hクリーム(尿素クリーム)
  • クロトリマゾール・M軟膏
  • インドメタシン1%外用液
  • 便秘薬
  • ヒドロコルチゾン・ジフェンヒドラミン軟膏
  • 鎮咳去痰剤13号
  • 感冒剤3号A
  • 解熱鎮痛剤7号A
  • ナファゾリン・クロルフェニラミン液A(点鼻薬)

この記事を書いた人

うき

薬剤師

東京薬科大学 薬学部卒

大学卒業後、製薬メーカー学術、中規模調剤薬局チェーンを経て、1999年地元で面分業の調剤薬局を開局。
2017年調剤業務を終了させ相談薬局として再スタート。
漢方薬、サプリメント、薬局製剤がメイン。まだまだ勉強の毎日です。

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