グレープフルーツジュースと相互作用のある代表的な医薬品

この記事を書いた人

じん

薬剤師
日本大学 薬学部卒

7 カルバマゼピンとグレープフルーツの相互作用

てんかんや躁病、三叉神経痛でよく使用されるカルバマゼピン(商品名:テグレトール)において、グレープフルーツジュースは顕著な影響を与えることが報告されています。

200mgのカルバマゼピンとともに、グレープフルーツジュースまたは300mLの水を与えられたクロスオーバー研究では、水と比較して、グレープフルーツは最大血中濃度(Cmax)を140%に増加させ、血漿濃度-時間曲線下面積(AUC)を141%に増加させました。しかし、最高血中濃度到達時間(Tmax)に関しては有意義な影響を与えなかったと報告されています9)

グレープフルーツジュースのCYP3A4に阻害作用によりカルバマゼピンのバイオアベイラビリティーが高まるようです。
カルバマゼピンの過量投与では、振戦、興奮、痙攣、意識障害などの中枢神経障害が起こる可能性があります。

8 シクロスポリンとグレープフルーツの相互作用

シクロスポリン(商品名:サンディミュンネオーラル)は、グレープフルーツジュースのCYP3A4阻害作用により、血中濃度が高まることが報告されています。

14人の健康な成人の血中シクロスポリン濃度に対するグレープフルーツジュースの効果を評価した研究では、各被験者にシクロスポリン300mgとグレープフルーツジュース250mL、オレンジジュース、または水を経口投与したところ、 血漿濃度-時間曲線下面積(AUC)は、グレープフルーツジュースの方が水と比較して145%、オレンジジュースと比較して143%有意に高かったと報告されています10)

添付文書によれば、シクロスポリンの過量投与により悪心・嘔吐、傾眠、頭痛、頻脈、血圧上昇、腎機能低下等が出やすくなるとあるので要注意です。

9 シルデナフィルとグレープフルーツの相互作用

グレープフルーツジュースのCYP3A4阻害作用はシルデナフィル(商品名:バイアグラ)に影響を与えます。

24名の健康な白人男性ボランティアにシルデナフィルとグレープフルーツジュースまたは水を投与した研究では、グレープフルーツジュースは、シルデナフィルの血漿濃度-時間曲線下面積(AUC)を123%に増加させたと報告されています。
また、シルデナフィルの最大血中濃度(Cmax)は実質的に変化しなかったが、最高血中濃度到達時間(Tmax)が長くなる傾向があったとも報告されています11)

シルデナフィルは、添付文書の重要な基本的事項に以下の記載があります
~以下引用~

4時間以上の勃起の延長又は持続勃起(6時間以上持続する痛みを伴う勃起)が外国市販後有害事象で少数例報告されている。持続勃起に対する処置を速やかに行わないと陰茎組織の損傷又は勃起機能を永続的に損なうことがあるので、勃起が4時間以上持続する症状がみられた場合、直ちに医師の診断を受けるよう指導すること。
引用元 バイアグラ錠 添付文書

グレープフルーツジュースの併用により、上記の副作用リスクが上昇することが考えられます。
あまり患者側から質問しにくい薬剤である点も考慮し、薬剤師から積極的なアドバイスがあると良いかと思います。

10 デキストロメトルファンとグレープフルーツの相互作用

グレープフルーツジュースはデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物(商品名:メジコン)のバイオアベイラビリティを有意に増加することが報告されています12)13)

作用機序やどの程度の影響があるのかについては不明でしたが、複数の文献により同様の結果が報告されており、信憑性は高いと言えるのではないでしょうか。

デキストロメトルファンの「過量投与」の項には以下の記載があります。
~以下引用~

嘔気,嘔吐,尿閉,運動失調,錯乱,興奮,神経過敏,幻覚,呼吸抑制,嗜眠等を起こすことがある。
引用元 メジコン添付文書

デキストロメトルファンを過量投与した場合、シナプスにおいてセロトニンの取り込みを阻害するため、神経や脳、脊髄のセロトニン濃度を上昇させ、上記のような「セロトニン症候群」が起こりやすくなります。

特に、車の運転や危険な作業に従事する患者さんに対しては、眠気やふらつきにが起こりやすくなるので、忘れずに服薬指導をすべきです。

11 フェキソフェナジンとグレープフルーツの相互作用

フェキソフェナジン(商品名:アレグラ)は医療用だけでなくOTC医薬品でも発売されており、多くの方に使用されている薬剤です。
調剤薬局で働く薬剤師だけでなく、OTC専属の薬剤師や登録販売者の方にも、ぜひ相互作用については知っておいてもらいたい薬剤の一つです。

12名の健康なボランティアを対象に、グレープフルーツジュースまたは水を300 mL摂取したパターンと、グレープフルーツジュースまたは水を1200mLで摂取したパターンでそれぞれフェキソフェナジン120mgを同時に摂取させた研究によれば、300mLのグレープフルーツジュースは、対応する量の水を飲んだ人の血漿中薬物濃度-時間曲線下面積(AUC)とフェキソフェナジンの最大血中濃度(Cmax)をそれぞれ58%と53%に減少させ、1200mLのグレープフルーツジュースでは、対応する量の水を飲んだ人のAUCとCmaxをそれぞれ36%と33%に減少させたと報告されています14)

このバイオアベイラビリティ減少の理由は、グレープフルーツジュースがおそらく腸内有機アニオン輸送ポリペプチドA(OATP-A)による取り込みの直接阻害を引き起こすことによって、上記のような結果が生じたのではないかと考えられています。

一方で、フェキソフェナジンとデスロラタジン(商品名:デザレックス)の経口バイオアベイラビリティに対するグレープフルーツジュースの影響を評価した別の研究では、フェキソフェナジンのC(max)及びAUCはグレープフルーツジュースの摂取により30%減少したが、デスロラタジンのバイオアベイラビリティはグレープフルーツジュースの影響を受けなかったとされています15)

この結果から、抗ヒスタミン薬の中でもグレープフルーツジュースと相互作用があるものとないものが存在していることが分かります。

患者さんの嗜好に合わせた薬剤選択ができるように知識をつけておくことにより、処方医に対する提案が可能となり、このようなスキルこそが、今後の薬剤師に求められるスキルの一つなのではないかと考えます。

参考文献
1)Grapefruit Juice and Statins
2)Effects of Grapefruit Juice and SLCO1B1 388A>G Polymorphism on the Pharmacokinetics of Pitavastatin
3)Dramatic inhibition of amiodarone metabolism induced by grapefruit juice
4)Intestinal OATP1A2 inhibition as a potential mechanism for the effect of grapefruit juice on aliskiren pharmacokinetics in healthy subjects
5)Grapefruit Juice Decreases the Systemic Availability of Itraconazole Capsules in Healthy Volunteers
6)Can grapefruit juice influence ethinylestradiol bioavailability?
7)Does grapefruit juice increase the bioavailability of orally administered
8)The effects of grapefruit juice on the pharmacokinetics of erythromycin
9) Effect of grapefruit juice on carbamazepine bioavailability in patients with epilepsy
10) EFFECT OF GRAPEFRUIT JUICE ON CYCLOSPORINE PHARMACOKINETICS IN RENAL TRANSPLANT PATIENTS1
11) Effects of grapefruit juice on the pharmacokinetics of sildenafil
12)The effect of grapefruit juice and seville orange juice on the pharmacokinetics of dextromethorphan: The role of gut CYP3A and P-glycoprotein
13)Dose–response relationship for the pharmacokinetic interaction of grapefruit juice with dextromethorphan investigated by human urinary metabolite profiles
14)Effect of Grapefruit Juice Volume on the Reduction of Fexofenadine Bioavailability: Possible Role of Organic Anion Transporting Polypeptides
15)Grapefruit Juice Reduces the Oral Bioavailability of Fexofenadine But Not Desloratadine

 

 

この記事を書いた人

じん

薬剤師
日本大学 薬学部卒

薬学部を卒業後、某ドラッグストアにて2年間OTC業務に従事。
その後、その後現在に至るまで調剤併設ドラッグストアにて健康⾷品やOTC医薬品の相談業務を受けつつ、保険調剤業務をこなす。
栄養や漢方のセミナーを積極的に受講し、患者様やお客様に喜ばれる情報提供を心掛けている。
昨今の健康意識・セルフメディケーションの⾼まりから、主に生活習慣病の予防・改善に役立ち、⼀般の方でも分かりやすい情報をツイッターやブログにて発信中。

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