グレープフルーツは多くの医薬品との相互作用があります。
自分で勉強していたり、薬局で働いている時に薬情などを見ていても、
「グレープフルーツジュースは避けること」と言う記載はよく目につくと思います。
しかし、患者さんから「私が飲んでいる薬はグレープフルーツと相互作用はありませんか」と質問されると、即答できないケースもあるのではないでしょうか?
グレープフルーツとの相互作用がある医薬品は非常に多いのですが、代表的な医薬品をまとめました。
脂質異常症(特に高LDL-C血症)では、非常によく処方されるスタチン系の一部の医薬品もグレープフルーツジュースと相互作用があります。
グレープフルーツジュースを1杯飲むと、シンバスタチンとロバスタチンの血中濃度が同時に摂取された場合は約260%増加し(12時間離して摂取された場合は約90%)、アトルバスタチンは約80%(摂取された場合はいつでも)増加したという報告があります1)。
この血中濃度の上昇率は、極めて危険なレベルです。
上記の薬品は主にCYP3A4で代謝されるのですが、グレープフルーツに含まれるフラノクマリンが小腸上皮細胞に存在するCYP3A4を阻害し、アトルバスタチンやシンバスタチンの代謝を阻害してしまうからです。
万が一にも、上記の医薬品を服用中はグレープフルーツジュースは避けるように服薬指導しなければいけません。
また、ピタバスタチン(商品名:リバロ)でもグレープフルーツジュースの同時摂取により、AUC(0-48時間)を14%増加させた報告がされています2)。
ピタバスタチンはCYP2C9でわずかに代謝される胆汁排泄の薬剤なので、グレープフルーツによる影響の理由はわかりません。
添付文書には併用注意の記載はありませんが、念のためグレープフルーツジュースを同時摂取することは避けた方がよいと考えられます。
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アミオダロン(商品名:アンカロン)は、言わずと知れた「毒薬」ですが、グレープフルーツジュースは、アミオダロンの代謝を劇的に阻害して、最高血中濃度(Cmax)を84%も増加させた報告があります3)。
アミオダロンは主にCYP3A4で代謝されるのですが、グレープフルーツに含まれるフラノクマリンが小腸上皮細胞に存在するCYP3A4を阻害しアミオダロンの代謝を阻害してしまうためです。
毒薬で、Cmaxがほぼ2倍。
しかも、消失半減期は19~53日の医薬品です。
間質性肺炎、肺胞炎、肺線維症、肝障害、既存の不整脈の重度の悪化などの致死的な副作用の発現リスクが非常に高くなると言えます。
アミオダロンが処方されている患者さんには、グレープフルーツジュースとの相互作用に対する服薬指導は見落とすことはできません。
アリスキレンフマル酸塩(商品名:ラジレス)とグレープフルーツジュースを同時投与すると、アリスキレンの血漿濃度が低下し、最高血中濃度(Cmax)の平均は61%減少したと報告されています4)。
これは、アリスキレンフマル酸塩は細胞内のポンプによって輸送されますが、グレープフルーツはポンプの働きを変化させ、アリスキレンフマル酸塩の体内の吸収量を減少させるためだと考えられています。
この相互作用を回避するためには、少なくとも4時間以上間隔をあけて摂取するようにしなければいけません。
イトラコナゾール(商品名:イトリゾール)は、言わずもがな併用禁忌が多い薬剤ですが、グレープフルーツジュースとも相互作用があります。
イトラコナゾールは、CYP3A4により代謝されますが、グレープフルーツに含まれるフラノクマリンが小腸上皮細胞に存在するCYP3A4を阻害し、イトラコナゾールの代謝を阻害してしまうのです。
ある研究によると、グレープフルーツの同時摂取により、Tmaxは大幅に増加させたが、AUC(0-48時間)は43%減少したと報告されています5)。
つまりグレープフルーツは、イトラコナゾールのバイオアベイラビリティーを向上させるのではなく、吸収を低下させるようなのでその点も要注意です。
グレープフルーツはCYP3A4阻害作用により、エストロゲン製剤の体内での代謝も抑制し、エストロゲンの体内への吸収量を増加させる可能性があります。
13人の健康なボランティアにハーブティーまたはグレープフルーツジュースとともに50μgのエチニルエストラジオールを投与し、ランダム化されたクロスオーバー試験で研究した報告によると、ハーブティーとは対照的に、グレープフルーツジュースは、ピーク血漿濃度(Cmax)を137%に大幅に増加させ、血漿中濃度時間曲線下面積(AUC0-8)を128%に増加させたとされています6)。
また、グレープフルーツジュースは、エストラジオールのAUCを117%に上昇させたという報告もあります7)。
エストロゲン製剤はよく処方される薬剤でありながら、エストロゲン依存性悪性腫瘍の既往や喫煙者、前兆を伴う片頭痛、血栓症の既往や糖尿病、脂質異常症、高血圧などの多くの患者さんに注意が必要な薬剤です。
患者さんの中にはグレープフルーツが好きな方も一定数いることに留意し、相互作用についての服薬指導も漏れなく行うようにしなければいけません。
エリスロマイシン(商品名:エリスロシン)も、グレープフルーツジュースの小腸におけるCYP3A4阻害作用により代謝が阻害されることが報告されています。
水またはグレープフルーツジュースと一緒に400mgのエリスロマイシンを投与した6人の健康な男性ボランティアで調査したところ、グレープフルーツジュースは、水分摂取量と比較して、平均Cmax値およびエリスロマイシンの平均AUC(0-12)値を有意に増加させました。
ただし、エリスロマイシンのTmaxおよびt1 / 2値は、グレープフルーツジュースの摂取量には影響を与えなかったとしています8)。
エリスロマイシンの血中濃度上昇に伴い、下痢や発疹、アナフィラキシーなどの副作用リスクが上昇することが考えられます。
小児にエリスロシンドライシロップのように苦味がある粉薬が処方されているケースであれば、酸味を避けるように指導することもあるため、相互作用の危険性も減少するかもしれませんが、錠剤で処方されているケースでは通常そのような指導はしないと思うので、頭に入れておきたい内容です。
>グレープフルーツジュースと相互作用のある代表的な医薬品【その2】へ続く
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