先日、ある患者さんから
毎朝、コーヒーで薬飲んでるだけど、飲み合わせ大丈夫だよね?
と質問されました。
一般の方はコーヒーはありふれた飲み物であり、そんなものが医薬品と多くの相互作用があるとは考えにくいようです。
適度なコーヒーの摂取は、結腸・直腸がんのリスク低下、パーキンソン病の予防、胆石の予防、2型糖尿病のリスク低減など様々なメリットが知られています。
しかし薬物相互作用によりコーヒーのカフェインの血中濃度が上昇した場合には、不安・不眠、興奮、胃腸障害、心拍数や呼吸数の増加などを引き起こす恐れがあり、非常に危険です。
私自身もコーヒーはよく飲むのですが、薬を服用するタイミングと一定の間隔をあけるなどして慎重に摂取しています。
コーヒーと相互作用のある代表的な医薬品をご紹介します。
是非、患者さんの服薬指導に活用していただければと思います。
コーヒーと飲み合わせが悪い代表的な成分はエフェドリンです。
生薬だと麻黄に入っている成分ですね。
エフェドリンは、交感神経の働きを高めて、血管収縮、心拍数増加、血圧上昇などを引き起こしますが、コーヒーに含まれるカフェインも同様に、中枢神経系、心臓、筋肉、および血圧を制御する中枢を刺激する作用があるのです。
つまり、カフェインを含むコーヒーとエフェドリンを含む医薬品を併用することにより、中枢神経への刺激が過剰となり、深刻な副作用や心臓の異常を引き起こしやすくなるのです。
風邪薬
咳止め
漢方薬
以上は、エフェドリンを含む市販薬の一例です。
気管支喘息治療薬のβ2刺激薬は、気管支平滑筋のβ2受容体を刺激して気管支を拡張させる作用があります。
一方で、心臓にはβ1受容体があり、β2受容体への選択性がより高いβ刺激薬ほど、心臓のβ1受容体への刺激が少なくなるのですが、「β刺激薬」と呼ばれる薬剤には多少なりとも心臓への刺激作用があると言えます。
つまり、喘息治療薬のβ2刺激薬は心臓を刺激し動悸や不整脈と言った副作用リスクが上昇するのですが、カフェインの過剰摂取は心臓を刺激するため併用には注意が必要なのです。
コーヒーにはタンニンが含まれますが、タンニンは多くの医薬品と結合して、その吸収量を減少させます。
タンニンは三環系抗うつ剤とも、飲み合わせが悪く、効果を減弱させてしまう恐れがあります1)。
この対策としては、三環系抗うつ剤を服用する食前1時間以上、服用後2時間以上間隔をあけることで、この相互作用は防ぐことができます。
薬ではないのですが、アルコールもコーヒーと飲み合わせに注意が必要です。
理由は、コーヒーに含まれるカフェインは体内で代謝されてから排泄されますが、アルコールはカフェインの代謝を抑制すると考えられているためです。このため、併用するとカフェインの血中濃度が上昇し、神経過敏、頭痛、頻脈などの副作用が起こりやすくなります。
コーヒーとアルコールが一緒になったドリンクもあるようなので注意しなければいけませんね。
コーヒーはキノロン系抗菌薬とも飲み合わせが悪いです。
例えば、上記のようなキノロン系抗菌薬もカフェインの代謝を抑制すると考えられています。
併用することで、カフェインの副作用である神経過敏、頭痛、下痢などが出現しやすくなる可能性があります。
あまり知られていませんが、コーヒーは血液凝固を抑制する作用が報告されています4)。
そのため、血液凝固を抑制する医薬品と併用すると、紫斑や出血傾向となりやすくなる可能性があります。
抗血栓薬を服用中の患者さんで出血傾向が見られる方や、コーヒーを過剰に摂取する方には注意をしなければいけませんね。
【参考文献】
2)Effect of quinolones on caffeine disposition.
3)Effect of quinolones on caffeine disposition
4)Effect of coffee extracts on plasma fibrinolysis and platelet aggregation.
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