人体の体液中に最も含まれる代表的な陽イオンとしてNa+、K+が挙げられます。
Na+の基準値は「135~145mEq/L」とやや幅がありますが、K+の基準値は「3.5~5.0mEq/L」と許容される変動の幅が非常に狭くなっています。
カリウムが異常値の原因としては、高値の場合は、脱水、腎不全、糖尿病、アジソン病などが考えられます。
低値の場合は、嘔吐、下痢、利尿薬の使用、摂食障害のほか、呼吸不全症候群、アルドステロン症、クッシング症候群などが疑われます。
そして、カリウムの基準値から逸脱する変動は神経麻痺や心室性の不整脈など、生命の危険に直結する危険性があります。
つまりカリウムのコントロールは非常に重要なのです。
塩化カリウム注射液は,各種疾患または状態における低カリウム血症を改善するためのカリウム補給剤として頻用される医薬品です。
しかし、その使用に当たっては、
ワンショット静注を禁止、必ず希釈をおこない、下記の1〜3を原則遵守する必要があります。
使用方法を誤れば、K+の急激な上昇を引き起こす危険性があります。
過去にカリウム補給注射剤を薄めないで急速静注したことによる死亡例が報道されています。
ただし、心室性不整脈などの心電図異常(モニターを着用している状態)や麻痺、中心静脈ラインが確保されているなど状態においては、医師の判断において、投与濃度を100 mEq/L 程度まで上げて投与されることもあります。
また、末梢静脈ラインからの高濃度の投与は静脈炎のリスクも伴うため、注意が必要となります。
注射剤の中には、光により変化してしまうため、投与時に遮光が必要な薬剤があります。
主にビタミン剤がこれに該当します。
塩化カリウム注射液には均一に希釈するための目安として、黄色のリボフラビンリン酸エステルナトリウム(ビタミンB2)が添加されています。
このリボフラビンリン酸エステルナトリウムはあくまでも黄色の着色剤であるため、保存中は遮光が必要ですが、有効成分である塩化カリウムは光に安定なため、 投与中は遮光の必要がありません。
塩化カリウム注射液の処方例を紹介します。
処方鑑査で注意することはカリウムの投与濃度が40mq/L以下であるかの確認です。
ただし、特に救急領域において、患者状態と医師の判断によってあてはまらない実例もあります。
下記の指示2例について処方鑑査していきたいと思います。
指示1
生食注500mL袋(K:0mEq/L=0mEq/500mL)に塩化カリウム注射液20mEq(1本)混注
→K濃度は約20mEq/500mL=約40mEq/1000mL =約40mEq/L
投与濃度としては、40mEq/L以下となっているため、問題ありません。
投与速度としては、20mEq/hr以下となるように、1時間以上かけて滴下する必要があります。
指示2
3号輸液500mL(ソリタT3)(K:20mEq/L=10mEq/500mL)に塩化カリウム注射液20mEq(1本)混注
→K濃度は(約10mEq+20mEq)/500mL=約30mEq/500mL=約60mEq/1000mL =約60mEq/L
3号輸液にはもともとカリウムが含まれています。
ソリタT3の場合だと、500ml中のKは10mEq含まれており、塩化カリウム注射液20mEqを混注することで60mEq/Lとなり40mEq/Lを超えてしまっています。
そのため、混注する塩化カリウム液の減量提案が必要となります。
ただし、心室性不整脈などの心電図異常(モニター着用している状態)や麻痺、中心静脈ラインが確保されているなど状態においては、医師の判断において、投与濃度を100mEq/L 程度まで上げて投与されることもあります。
末梢静脈ラインからの高濃度の投与は静脈炎のリスクも伴うため、注意が必要となります。
このように塩化カリウム注射液が処方された際は
を頭に入れて鑑査するようにしましょう。
参考
・ワシントン集中治療マニュアル 監訳田中竜馬 発行:メディカル・サイエンス・インターナショナル
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