【現役薬剤師監修】

こんにちは!ファーマシスタ薬学生代表・現役薬学生の中野です。



今回は、ある疾患についてご紹介したいと思います。それは、



「 線維筋痛症 」



名前から、筋肉痛のようなものかな?と思われた方もいるかもしれませんが、実はそのような痛みではありません。



タイトルに書いたように風や衣服の擦れ、さらには大きな声といったような「目に見えないもの」にも痛みを感じてしまいます。残念ながら、原因や根本的な治療法は未だ解明されておりません。



どんな痛みなの?



難病なの?



患者さんはどういう暮らしを送っているの?



線維筋痛症は、まずその病名を知っている人がとても少ない病気です。難病として指定されていないため認知されにくいという面もあります。数年前までは、医師でさえ4人に1人が病名を知らなかったと言われています。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/jcr2007/200704/503088.html


この記事では、インターネット上で調べれば出てくる基本的な情報に加え、実際に病気に苦しんでいる患者さんにお聞きした「痛み」を皆さんに知っていただければと思います。



(当記事は「実際の患者さんの声」をもとに、周囲にどう接してほしいか?を伝えることを第一の目的にしていますので、「症状・原因・治療」の項目はかなり簡潔に書いております。)

症状

線維筋痛症の症状として「強い疼痛」があり、全身が痛いこともあれば局部だけが痛む場合もあります。また痛みの強さもそれぞれで、ひどい時は風が体に吹き付けるだけでも激痛が走ります。



随伴症状として、こわばり感、倦怠感、疲労感、睡眠障害、抑うつ、自律神経失調、頭痛、過敏性腸炎、微熱、ドライアイ、記憶障害、集中力欠如、レストレスレッグス症候群などが挙げられます。(線維筋痛症友の会 http://www.jfsa.or.jp/page0101.html より)



外見では、線維筋痛症の患者であるかどうかは判断できません。ですので、些細な刺激で激痛を感じているにも関わらず、線維筋痛症であることやそもそもどんな疾患であるか説明する機会も持てずに、痛みに耐えています。

原因

線維筋痛症の原因はまだよくわかっていませんが、有力な説として、脳が痛みの信号を感じる機能に障害が起きていると考えられています。脳には痛みの信号を伝える機能(アクセル)と信号を抑える機能(ブレーキ)が備わっていますが、何らかの原因でこの機能に「誤作動」が生じ、ブレーキが効かない状態もしくはアクセルを踏み過ぎた状態になると、通常では痛みを感じない程度の弱い刺激でも痛みを感じるようになります。

http://toutsu.jp/pain/senikintsu.html


また、感染症、外傷(交通事故など)、外科手術、ストレス(肉親の死など)、幼児期の虐待 などの精神的・肉体的ストレスが発症の引き金となるケースもあるそうです。

http://www.azegami.com/fm/#原因

治療

上述の通り、原因不明ですので根治治療はありませんが、これまで数多くの薬物療法・非薬物療法が試みられています。

薬物療法では、神経因性疼痛に対する治療薬として、プレガバリン(商品名:リリカ)、デュロキセチン塩酸塩(商品名:サインバルタ)、ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤(商品名:ノイロトロピン)などが知られています。(※2017年現在で線維筋痛症に伴う疼痛に適応があるのはリリカ、サインバルタ)



また、線維筋痛症合併症及び随伴症状に対する治療薬として、以下に詳しく分類してまとめられているので、より詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。

http://minds4.jcqhc.or.jp/minds/FMS/CPGs2013_FM.pdf (p131以降)


非薬物療法としては、鍼治療、運動療法、温熱療法、食事療法、心理療法などが知られています。

心理療法・いわゆる認知行動療法

線維筋痛症を発症する患者さんは、責任が強い・ストレスを感じやすい・繊細な方が多いと言われています。加えて、発症後も途切れることのない痛みや思うように動かない体に、ストレスや自分を責める気持ちが生まれてしまいます。



小さな目標を決め、「今日はここまで出来た!」と自分を責めすぎないように楽しいことでリフレッシュし、ストレスが減ると痛みを感じにくくなるようです。



ここで絶対に勘違いしてほしくないのが、「決して思い込みの病気ではない」ということです。痛い時は問答無用で痛いし、ひどくなれば寝たきりの人もいます。ストレスが減ると痛みが少し和らぐというのは、あくまで症状が中度~軽度の方のみです。



薬だけでは回復しないため、あくまでも、薬物療法とは別の方向からのアプローチとして有効とされている治療方法です。



しかしそうして治療を重ねることで、治療中はマスク・サングラス・帽子・杖が手放せなかったのに、今では健常人と同じようにお仕事ができている患者さんもいます。

線維筋痛症を発症しやすい人

線維筋痛症は、一般的に40~60代の中高年の女性に多いといわれています。また、線維筋痛症になりやすい性格として「頑張り屋さん」というのもあるそうです。

患者さんが痛みを感じる場面

ぶつかる・肩を叩かれるなどの強い衝撃はもちろんですが、他にも線維筋痛症の患者さんが痛みを感じる場面はあります。

①台風、雨、湿度、寒さなど気候の変化

物理的な刺激だけではありません。体がどうしようもなく痛くて動かなくなるほど、体調に影響を受けます。

②口の中がすりむけたように痛い

実際に血が出たり傷があるわけではないのですが、ヒリヒリと痛みが続きます。

③風に当たると痛い

外出時はマスク・サングラス・帽子・マフラーなどの防風具が欠かせないそうです。しかし、その着用しているものと肌との擦れもまた痛みにつながるとのこと。

医療系でない一般人の方に説明するときには、「風が吹いても痛い」というと「痛風?」と勘違いされてしまうことが多いので、「人の何十倍、何百倍にも痛みが倍増してしまう病気」と良いとのこと。もちろん風が吹いても痛いんですけどね。

④お風呂の熱さが痛い・シャワーが針のように感じる

取材をした患者さん「些細な刺激が激痛になるため、空のペットボトルが倒れて体に当たっただけで、激痛が走り、気絶しそうになったことがあります。」

⑤音や光が痛い

静かめの番組でも、少し離れた場所にいても、音によって神経が過敏になって全身や頭が痛くなります。頭痛がひどい時に、強い光や音があるとさらに頭がガンガンしたりすることはありせんか?それと似たような感じ、と分かりやすく表現する患者さんもいます。

ある患者さんは、体調や痛みのことを聞かれた時、「全身がとても痛い」「人の痛みの数十倍」と言っても理解されにくいので、「リウマチの10倍」「風が当たっても痛い」「少し触られても痛い(実際にトントンと背中や肩を触られるなど)」と伝えるようにしているそうです。

あなたにできること・認知した上でどう接するか?

公共の場でのマナーに気をつける

電車であなたのすぐ横に立っている乗客は、もしかしたら線維筋痛症の患者さんかもしれません。でも、見た目ではわからない病気なので、なかなか難しいですよね。

線維筋痛症の患者さんの中には、このようにご自身の疾患をグッズにして身につけ、発信しておられる方もいます。



(引用:https://utme.uniqlo.com/jp/front/mkt/show?id=225332&locale=ja



(「内部疾患カードホルダー」見た目ではわからない内部疾患を持っている方が、公共施設等で、健常者でもわかるような表示をしていく為のネームホルダー型カード http://ameblo.jp/mano-ff/entry-12238135900.html)


このような方を見かけたら、「皮膚に衝撃を与えないように気をつける」「大きな音を立てない」など、ぜひ少しの心遣いをお願いします。



また、もし職場や学校で線維筋痛症の患者さんがいたら、まずどのような病気か調べて、正しく知ってあげてください。



取材をした患者さんの1人は、「ぶつかるだけでも激痛が走るので、エスカレーターの片側を歩く(走り抜ける)危険行為をやめてほしいです。優先席では、声をかけたら優先的に譲ってほしいです。他には、急な移動が出来ないので、歩きスマホをやめてほしいなど、マナーが問われる基本的なことを守っていただくだけでとても助かります。」とおっしゃる方もいました。

最後に

今回このような記事を作成しようと考えた理由は、ある患者さんがご自分の病気について知ってもらうために描いたマンガを読んだのがきっかけです。

「水色ともちゃんと統合失調症」 https://note.mu/tomoyomoto/n/nb78693ac9766?magazine_key=m0f0d851f4890


薬学生として勉強してきたつもりでしたが、患者さんの現実はこんなにも教科書とかけ離れているのかと衝撃を受けました。そして、私もこの記事のように「読むだけでちょっと身の回りの患者さんに心遣いができるようになる」、そんな記事が書きたいと思っていたときに @my_kin21014 さんに出逢いました。



1人でも多くの患者さんや周囲の皆様に、少しの安心や幸せを届けられていれば幸いです。